もうすぐ小学生、それでもオムツが外れない──なぜ?(後編)

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【前編はこちら】

👉3歳で言葉が出ない…それでもトイトレは始められる?──「しゃべれるようになってから」は誤解です(前編)

目次

小学校入学なのにオムツが外れない──よくある相談に潜む“本当の課題”

4月から小学校入学なのですが、うちの子、まだオムツが外れていなくて…

こうしたご相談が、毎年いくつか届きます。年長さんのご家庭からだったり、すでに小学校に通い始めてしばらく経っているケースだったり──

時期はさまざまですが、共通しているのは「本来ならもうパンツに移行しているはずの年齢」で、日中もオムツのままという状態が続いているという点です。

一見すると、ただトイトレ(トイレトレーニング)が遅れてしまったように見えるかもしれません。

でも、実際にはそう単純な話ではありません。

この背景には、家庭・支援者・そして社会の“ズレ”が、長い時間をかけて積み重なっているケースが多くあります。

そして気づいたときには、親御さんが心のどこかで思っていたあの問いが、重くのしかかってくるのです。

「どうして、ここまで来てしまったんだろう…?」


トイトレが進まないまま4歳・5歳に──“よくある道のり”に潜む落とし穴

子育ての中で、多くの親御さんが一度はこう思います。

そろそろ、オムツ外さないと…

そしてスマホを開いて、「トイトレ いつから」と検索してみる。
出てくるのは専門家っぽい記事や体験談。でも、書いてあることはバラバラです。

とりあえず試してみる。うまくいけば自然とパンツに移行する。
そうして“なんとなく成功”するご家庭も、たしかにあります。

でも、すんなり進まないケースもあります。

  • トイレを嫌がって断固拒否する
  • パンツに履き替えたのに、排泄の直前にまたオムツを要求する
  • どんな声かけも跳ね返されてしまい、家庭の雰囲気までギスギスしてくる

ここまでくると、親御さんの不安は一気に高まります。
「トイレ 嫌がる」「トイトレ うまくいかない」と、また検索が始まる。

そして今度は、“専門家監修”とうたわれた記事が、目に入ってきます。

「無理に進めず、本人のペースで」
「焦らなくても大丈夫ですよ」

いったん安心したような気持ちになりますが、不安はどこか残ったまま。
そのまま幼稚園に入園し、時間だけが過ぎていきます。

周囲の子どもたちが少しずつパンツに移行していくなか、
我が子だけはオムツのまま。むしろ、パンツやトイレへの拒否が強くなっているように感じる。

そこで、ようやく支援機関に相談してみると──

「そういう子もいますよ」
「まずは運動発達を促しましょう」

あれ? トイレトレーニングの相談だったはずなのに?
療育に通い始めたものの、排泄の話はどこかに置き去りになっている。

4歳、5歳と年齢を重ねるにつれ、オムツのサイズも限界に近づき、拒否もさらに加速。
ネットで「うちもそうだった」という体験談を読んでも、もう安心できなくなってくる。

支援は受けている。相談できる人もいる。
でも──何かが違う。どこかで見落としてしまった気がする。

「どこで、立ち止まるべきだったんだろう?」
「本当は、何が必要だったんだろう?」

そして気づけば、小学校入学がすぐそこまで迫ってきています。


ここまで来た背景──“オムツの問題”ではないかもしれません

ここまでの流れを見て、「うちも、少し似ているかも…」と感じた方もいるかもしれません。
でも、本当に向き合うべき問いは、ここです。

なぜ、こんなに時間がかかってしまったんだろう?

そしてこの問いの答えは、「ただのトイレトレーニングの遅れ」ではありません。

子どもがトイレを拒否する。泣く。暴れる。こだわる。
こうした行動が続いている場合、それは排泄という一つの場面に、家庭全体の課題が表れている可能性が高いのです。

(参考記事)

👉「イヤ!イヤ!」の連続で心が折れそうなあなたへ──2歳児と向き合う“親の土台”のつくり方

発達支援の専門家であれば、こうしたサインを見逃しません。
このようなケースでは──

支援は、早ければ早いほど良い

これは基本中の基本です。

現場経験が豊富な保育士さんや先生でも、「これは難しい」と感じるケースなら、
それはもう“トイレだけの話”ではないと考えるべきです。


ところが、いざ支援機関に相談しても、トイレトレーニングについての具体的な支援が入らないことも珍しくありません。

「そういう子もいますよ」
「そのうち外れますから、焦らずに」

──本当に、トイレトレーニングの支援経験がある人の言葉でしょうか?

こんなふうに曖昧な言葉が返ってきたとき、親御さんの中には“疑問・違和感”が残ります。

(参考記事)

👉専門家の「様子見でいいですよ」は本当?──支援が遅れる前に知っておきたいこと


そして、またスマホを開いて検索すると、ネット記事が見つかります。

「マイペースで進めてあげてください」
「無理強いは禁物です」

……それだけ?
あなたのご家庭に合った進め方、ちゃんと書かれていましたか?

「そもそも、どうやって進めればいいのか?」
「うちの子には何が合うのか?」

こうした問いに応えてくれる情報は、驚くほど少ないのが現実です。

そして、今。
現実には、小学校入学がもう目の前に迫っています。

それでもなお、「本人のペースで」「成長を待ちましょう」と言い続けますか?
もし、自分の子どもが同じ状況だったとしたら──本当に、同じことを言えるでしょうか?


ズレは、こうして積み重なっていきます

  • 家庭の「子育ての土台」が整わないまま進んでしまった
  • 専門家が「トイレトレーニングという分野に対応できなかった」
  • ネットの記事には、誰も責任を持っていなかった

その結果、気づけば、一番取り残されているのは──子ども自身です。


トイレトレーニングを始める前に知っておきたいこと──失敗を防ぐ考え方と支援の見極め

「トイレトレーニングをどう進めたらいいか分からない」と感じているなら──
まずは、前編で紹介した教科書を手に取ってみてください。

方法、心構え、準備まで──すべてがまとまっています。
多くのご家庭から「読んでよかった」と評価された内容です。

オムツ外しは何歳から?
トイレトレーニングはいつから?

こうしたネット検索に頼る必要はありません。
そこに、あなたのお子さんに合わせて作られた方法は、載っていないからです。


トイレやパンツへの強い拒否が続いている場合、
それは「トイトレのタイミングがまだ早い」ではなく、
支援を受けるタイミングが“すでに来ている”サインかもしれません。

その際には、排泄という行動だけでなく、親子の関わり方や環境のあり方を見直す視点が重要です。

本来、「強い拒否があるときこそ、早めの支援を」──

なのですが、専門家にも「得意・不得意」、「経験値・技量の差」があります。

支援機関に行ったからといって、必ずトイレトレーニングに詳しい支援者に出会えるとは限りません。

そんなときこそ、教科書を手にしてこう伝えてみてください。

このような方法を参考にしています。アドバイスをいただけますか?

これは、利用者側から支援の方向性を示すという、ちょっとした“技”です。
支援を「おまかせ」にせず、お子さんに合った支援を、親自身が切り開いていく。

それは、賢く、勇敢なアプローチです。

※今回の記事では、脊椎や泌尿器系などの器質的な要因による排泄の困難、
夜尿症などの診療対象となるケースについては扱っていません。
該当する場合は、必ず専門の医療機関の指示に従ってください。

支援を受ける前に確認したい3つの視点──トイトレ・発達相談で後悔しないために

子どもの発達や行動に向き合ううえで、大切にしてほしい姿勢があります。

  • ためらわず、早期に支援を始めること
  • “誰に”相談するかを、慎重に見極めること
  • スマホで手軽に得られる情報は、基本的に疑うこと

これは、トイレトレーニングに限らず、子育て全般に共通する基本のスタンスです。


支援は、早ければ早いほどいい。
でも、それと同じくらい大切なのは──

その支援が、本当に“何か”を変えているか?

目の前の困りごとに、具体的な答えが返ってきているか?

この視点を、支援を受けている最中にも持ち続けてください。

見た目は丁寧で、それらしい言葉が並んでいても、
“実際には何も変わっていない”──そんな支援は、決して珍しくありません。

今回お伝えしたかったのは、まさにそのことです。

最後に、専門家を検討する際のヒントになる記事をご紹介します。

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そんな方にはこちらの記事が役に立つかもしれません。

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