子どもが一人で寝るのはいつから?“ひとり寝”の練習と親子の距離の考え方(前編)

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子どもの「ひとり寝」は何歳から?

うちの子、夜は私と一緒じゃないと寝られないんです…

これは、出張カウンセリングでもよくご相談いただくテーマです。

  • 子どもが一人で寝るのは何歳からがいいのか?
  • 添い寝はいつまで続けていいのか?

といった疑問を持つ親御さんは、とても多いです。

でも、私の立場から言えば、こうした
「何歳が正解か?」という話には、あまり意味がないと考えます。


代わりに、こんな姿を想像してみてください。
たとえば3歳くらいの子が、夜、歯磨きを終えると、こう言います。

もう寝るね。おやすみ〜

そして、自分から寝室へ向かい、ひとりで布団に入って寝る。
親は寝かしつけも添い寝も不要──そんな生活スタイルです。

私はこのような形を強くおすすめしています。
実際、子育て相談を通じて多くのご家庭で実現しています。

2025年の夏にも、3〜5歳のお子さんがいる3つのご家庭で
「ひとり寝の練習」をサポートしました。

どうでしょうか?

それを「理想的」と感じますか?
それとも「うちでは無理そう…」と思いますか?

もし「そもそもピンとこない」と感じた方は、
ここで読むのをやめてもらっても構いません。

でも──

そんなこと本当にできるの?

と、どこかでほんの少しでも感じた方は、
この続きを読んでみてください。


“夜はやることだらけ…”そんな親にこそ必要な『ひとり寝』の習慣

まず、大前提として。
親って、本当に、忙しいんです。

「今日の汚れた服、洗濯して乾燥までやらなきゃ…」
「保育園の連絡帳も書いておかないと…」
「あぁ、洗剤のストックが切れてる。Amazonで頼んでおこう…」

こうした“暮らしのToDoリスト”は、ひとつ終わったと思ったら、次の波がやってきます。
毎日、終わりがありません。

でも、子どもと一緒に寝落ちしてしまえば——
それらはすべて“明日送り”に。

これが何日も続くと、家の中のあらゆることが、少しずつ滞り始めます。
そして、気づかないうちに、イライラがたまってくるのです。

一方、子どもが一人で寝る習慣が身についていると、
親は自分のペースで家事を片づけたり、翌日の準備をしたりできます。

この違いは、生活の質を大きく左右する分岐点です。

さらに、夜の時間は、親にとって大切な“自分を回復させる時間”でもあります。

  • 子どもが寝たあと、コーヒーを飲みながら一息つく
  • スマホでSNSを見たり、少しだけゲームをしたり
  • 明日の予定をゆっくり整理する

たったそれだけの時間でも、心に余裕が戻ってくるものです。
そしてその余裕こそが——

「明日もこの子を可愛いと思える」気持ちを支えてくれる。

子どもの寝かしつけの卒業は、親にとっても大きな一歩です。
「ひとり寝」は、親の生活に“夜の自由”を取り戻す、ひとつの方法なのです。


“いつか離れる”その準備、できていますか?──ひとり寝が教える親子の距離

正直に言います。
私は、育児書などで見かける次のような言葉に、強い違和感を持っています。

「子どもが望むなら、何歳になっても一緒に寝るべき」
「夜のスキンシップが、子どもの心を育てる」

もし本気でそう思われるのであれば、ここから先は読まない方がいいかもしれません。
なぜなら、私ははっきりと——

それは違います

と考えているからです。


「スキンシップ」という言葉には、
なぜか“すべてが良いもの”のようなイメージがあります。

でも、それは大きな誤解です。

年齢や発達に応じて、望ましいスキンシップと、そうでないスキンシップがあります。
さらに状況や文脈によっては——

“悪いスキンシップ”だってあるのです。

たとえば、小学校高学年になっても、毎晩のように肌が触れる距離で親子が寝ている。
親の中に「そろそろやめた方がいいのでは…」という違和感があっても、
子どもの怒りや拒否が怖くて、なかなか言い出せない。

これはもう、「ひとり寝」の問題ではありません。
“親子の関係性”そのものの見直しが必要です。


子育てには、こんな自然な流れがあります。

親子が少しずつ距離を取り、やがて親元を離れていく

それは人間に限らず、動物の世界でも共通しています。

しかし、子どもは「いつか自然に離れていく存在」ではありません。
本当は、親が責任をもって「追い出す」必要がある存在なのです。

だからこそ──

「もう、ひとりで寝てみようか」という環境を用意することは、
親にとっても、子どもにとっても、“別れの練習”の第一歩になります。


実際の教育相談でも、次のような傾向が見られるご家庭には、
私のほうから「ひとり寝」を提案することがよくあります。

  • 何かと子どものペースを優先してしまいがち
  • 子どもが繰り出す「あの手・この手」に弱い
  • 子どもの言動にすぐ反応してしまい、線引きがあいまいになっている

これらは、親子の距離が“近すぎる”サインかもしれません。
「ひとり寝」は、それに気づいたあとに踏み出すためのステップになります。


◆親子が距離を取ること、離れることの大切さは、
こちらの記事でもお伝えしています。

👉“1人で遊べる子”は伸びる──早期療育で最初に身につける力とは


ひとり寝は“思いつき”では始めません──練習には準備と覚悟が必要です

そもそも──

このご家庭に提案するのは難しいかもしれない…

と感じた場合、私から「ひとり寝」の話を切り出すことはありません。

子どもをひとりで寝かせるというのは、
その日から生活リズムや関わり方を大きく変える必要がある支援です。

そのため、実際の教育相談では、

  • 寝室の環境をどう整えるか(安全面のチェックも)
  • 子どもが見せる可能性のある反応
  • 親の対応パターン

など、細かな確認と対応方法について、時間をかけてお伝えします。

とくに大事なのは、練習開始から最初の数日間の見通しを大人側がしっかり持つこと。
中には、これまで見たことがないほど強く泣いたり怒ったりする子もいます。

そうした反応を乗り越えるには…

親御さんにも、それなりの覚悟が必要です

だからこそ、提案する前に何度も意志の確認を行います。


実際、教育相談の初期段階でいきなり「ひとり寝」をすすめることは、ほとんどありません。
ある程度、子育ての土台が整ってきたご家庭に対して、タイミングを見てお声がけします。

そうした親御さんたちは、
「まだ早いのでは…」「かわいそうで…」といった言葉を、ほとんど口にされません。

むしろ──

今がそのときなんですね


子どもの成長に必要なステップとして受け止め、前向きに取り組まれる方が多いです。
では、実際に練習を始めてどれくらいで「ひとり寝」できるようになるか──

数日〜1週間ほどで完了するケースがほとんどです。


ちなみに、「ひとり寝」が習慣になったあと、
親御さんにこんなふうに尋ねてみることがあります:

また、お子さんと一緒に寝たいと思いますか?

すると、決まって返ってくるのはこのひと言。

もう大丈夫です(笑)

その苦笑いこそ、『もう一緒に寝なくても大丈夫』という親の安堵であり、
ひとり寝が親子にとって大切な自立の一歩だったことを物語っています。


“ひとり寝”の先にあるもの──次回は、強度行動障害との関係について

ここまで読んでくださった方は、

なるほど、子どもがひとりで寝る習慣にはちゃんと意味があるんだな

と、少しでも感じていただけたかもしれません。

とはいえ、何度もお伝えしてきたように、
実際の支援現場では、いきなり「今日からひとりで寝ましょう」と提案することは、ほとんどありません。

……ですが。
そんな悠長なことを言っていられないケースも、現実にはあります。

それが――

強度行動障害の予防です。

「えっ、急にどうしたの?」
と思われた方もいるかもしれません。

でも、実は…

“ひとりで寝る”という生活習慣と、“強度行動障害の予防”には、深い関係があります。

もちろん、テーマは重たいです。

でもそこで語られる課題の多くは、
特別な家庭だけの話ではありません。

むしろ、ごく普通の子育ての中にもヒントがあり、
“今の関わり方”を見直すきっかけになる話でもあります。

次回【後編】では、

  • 「子どもが夜ひとりで寝ること」が、将来にどんな影響を及ぼすのか?
  • それが「家庭全体の未来」とどうつながっていくのか?

を、さらに具体的にお伝えしていきます。

後編はこちら。

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“ひとりで寝る”の練習は、まさに家庭への出張相談の形だからこそ、取り組める課題とも言えます。
出張カウンセリングが効果的な理由については、こちらでも解説しています。

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