相談のきっかけは「言葉の遅れ」から始まる
出張相談のお問い合わせをいただき、その内容を確認すると「言葉の遅れ」が必ず含まれています。今回、約10年分のお問い合わせを振り返ってみると、すべてのメールに「言葉が出ない」「言葉の遅れ」といった文言がありました。実に100パーセントです。
出張カウンセリングで初めてお宅を訪問したときも―

「うちの子は喋れるようになりますか?」
「どうやったら話せるようになりますか?」
これが親御さんにとっての一番の関心事であることは、きっと間違いないでしょう。
親の願いと支援者の問いは違うようで同じ
さて、そんなとき支援者である私は何を考えているかというと――



「この子と親御さんは、一体どんな生活をしているのだろうか?」
この一点に尽きます。
「おしゃべりするための方法を教えてほしい親御さん」と、「生活の実態を知りたい支援者」——
一見すると食い違っているような気がするかもしれませんが、実はそうではありません。
コナンくんのように、子どもの生活を観察する
この子は、何に興味があってどんな遊び方をするのか、どんな食べ物・飲み物が好きなのか、お父さんとお母さんとどんな風にかかわっているのか、誰とどう過ごすのが好きなのか――
まるで名探偵コナンくんのように生活を観察し、これらを明らかにすることが大切なのです。
たとえば、ジュースを毎日よく飲んでいる子どもがいるとしましょう。定型発達と呼ばれるようなお子さんであれば、1歳半くらいで単語が、2歳頃には“ジュース、のむ”のような二語文が出ることは珍しくありません。
すると、支援者の視点からは、「ほうほう、この子がジュースをゲットする手段は、単語(二語文)なんだな」ということが分かります。
親子のやりとり、そのすべてが犯人を見つけ出すヒント
出張カウンセリングでお宅を訪問したとき、まさにこれを見ているのです。「この子はジュースが好きとのことだけど、普段、一体どうやって手に入れているんだろう?」という視点です。
もちろんジュースだけにとどまりません。
- 「へぇ、ピタゴラスイッチが好きなのか。誰が、いつ、どうやってテレビをつけるのだろう?」
- 「あのぬいぐるみを絶対離さない?お母さんが洗濯したらどうなるんだろう?」
- 「私がお母さんと話し始めてから、ずっと泣きっぱなしだな。あれ、お母さんに向けて物投げ始めたぞ」
これらを通じて――
- 言葉以外の方法(行動)をいつまでも使い続けている。 →それはどんな方法(行動)?
- 言葉以外の方法を使い続けても生活が成立している。 →それって一体どんな環境?
ということが分かります。
そして、これらこそ、言葉の学習を阻害している、真犯人です。
次回:言葉の学習を妨げる真犯人とは?
「どうしたら、喋れるようになりますか?」
その答えは、
- 「言葉の発達を邪魔する要因(行動)を無力化させましょう」
- 「そんな良くない行動よりも、もっと良い行動を練習して、生活の中でたくさん使えるようにしましょう」
となります。
さて、ちょっと曖昧な言い方をしてきましたが、「十中八九は、こいつらが犯人」というものが、実は分かっています。
次回の後編では、その犯人の正体と、いかにこの犯人が手ごわい奴かについて、説明します。


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