強度行動障害は何歳から?──2歳・3歳にも関係する話です
私は10年以上、出張療育を通じて、ご家庭への直接支援を続けてきました。
親御さんの悩みも、お子さんの状態も様々です。
それでも、すべてのご家庭に共通する支援目標があります。
それが──
強度行動障害の予防
です。
私は、これがすべての療育の土台になると考えています。
しかし、もし──
あれは大きくなった子の話でしょ? うちはまだ2歳だから関係ない……
そう思っているなら、それは大きな間違いです。
たしかに、強度行動障害として正式に判定されるのは、思春期や成人期以降になる場合もあります。
しかし、自傷、他害、激しいかんしゃく、強いこだわりなど、家庭生活を壊していく行動は、何年も前の幼児期から始まっていることが少なくありません。
判定される年齢と、問題が始まる年齢は同じではないのです。
この記事では、療育の現場で実際に見てきたケースをもとに、強度行動障害が幼児期とどうつながっているのか、そして2歳・3歳の今から何をすべきかをお伝えします。
強度行動障害とは?──自傷・他害などで生活が回らなくなる状態
強度行動障害とは、自傷、他害、物壊し、激しいかんしゃく、強いこだわりなどが高い頻度で繰り返され、本人や家族の生活が成り立たなくなっている状態です。
具体的には、次のような行動があります。
自分を傷つける
頭を打ちつける、皮膚をかきむしる、自分の体を噛む、道具で自分を叩くなど。
他人に危害を加える
叩く・蹴る・引っかく・噛みつく・髪を引っ張るなど。
非常に強いこだわりがある
本人が決めたやり方や順番から少しでも外れると、激しく混乱する。
物を壊す
家具や道具を日常的に壊す、物を投げて周囲を危険にさらす。
生活が大きく乱れる
昼夜が逆転する、食事を極端に拒む、過食を繰り返す、便を壁にこすりつけるなど。
多動、興奮、パニックが激しい
危険な場所でも突然走り出す、大声で長時間泣き叫ぶ、興奮がまったく収まらない。
どれか一つだけでも、本人と家族の生活は相当困難になりますが、実際には、これらの行動がいくつも重なって現れることも少なくありません。
家庭生活だけでなく、集団生活も回らなくなる。強度行動障害とは、そのように特別な支援を必要とする状態です。
“困っているのに”スルーされる理由──子どもの手が“もみじ”だから
かんしゃくが激しく、興奮すると叩いたり噛んだりする。
それでも早期支援につながりにくいのは、子どもがまだ小さいからです。
2歳の子どもが、可愛いもみじのような手でお母さんを叩いても、あざや傷は残らないかもしれません。
大声で泣き叫び、床に寝転がって暴れても、
イヤイヤ期にはよくあること
言葉が出ないから仕方ない
と片付けられてしまいます。
しかし、子どもは成長します。
3歳、4歳、5歳、そして小学生になるにつれて、体は大きくなり、力も強くなる。泣き声や叫び声も、さらに大きくなっていきます。
子どもは今までと同じ行動をしているだけです。
それでも、ある時からその行動は「暴力」とみなされるようになります。
強度行動障害につながる行動は、ある日突然始まるわけではありません。
思春期や青年期になって判定されたとしても、その行動の芽は、何年も前の幼児期から存在していたケースが多いのです。
「判定」は後から。
しかし、「発生」はもっと前から。
だからこそ、子どもの手がまだ“もみじ”のうちに、支援を始める必要があります。
「強度行動障害かもしれない」と思ったとき、私がまずお伝えすること
私は、出張療育の中で、
これは強度行動障害の「芽」だ
と感じたとき、その可能性をご家庭にはっきりとお伝えします。
親御さんには、「まだそこまで深刻ではない」と見えるかもしれません。
しかし、初めてお会いした時点で、すでに他害や激しいかんしゃくなどの芽が育ち始めているケースは少なくありません。
だからこそ、2歳・3歳のうちから「予防」の視点で支援を始める必要があります。
ちょっと大げさでは……。
うちはそこまで深刻ではないような……。
「強度行動障害」という言葉は重く、最初は自分の子どもとは関係のない話に聞こえるかもしれません。
それでも私は、これまでの支援経験や実際の事例をもとに、今の行動が続いた先に何が起こり得るのかを、率直にお伝えします。
これは他人事ではない
そう理解していただくまでお話しすることも、支援の一部です。
そして、親御さんと私が同じ危機感を共有できたとき、ようやく予防的支援のスタートラインに立つことができます。
強度行動障害の予防は、幼少期から何を教えるかで決まる
強度行動障害の予防にもっとも効果があるのは、幼少期から支援を始めることです。
ただし、早く相談すればよいという話ではありません。私の出張療育では、家庭生活が崩れないために必要な力を、一つずつ具体的に教えていきます。
たとえば、
- 大人が相手をしてあげられないときでも、一人で穏やかに過ごせる
- 夜に眠り、家族全体の生活リズムを守る
- かんしゃくや自傷・他害ではなく、別の方法で要求を伝える
といった力です。
これらは、今の生活を楽にするだけではありません。子どもが成長し、体も力も大きくなったときに、家庭生活が回らなくなることを防ぐ土台になります。
具体的な支援方法は、次の記事で詳しく紹介しています。
👉 落ち着く力を育てる一人遊び──社会適応と強度行動障害予防のために(後編)
👉 眠れない夜に悩む前に。“ひとり寝”が子どもと家庭を守る理由(後編)
また、こうした支援を実際のご家庭でどのように始めるのかは、療育漫画でも描いています。


“今”が未来を変える──5年後・10年後の暮らしのために
強度行動障害は、決して“特別な誰かだけの問題”ではありません。
今、目の前にいるお子さんの「未来のかたち」に関わる問題です。
支援がうまくいくケースの鍵は、2つあります。
- 早いタイミングで支援を始めること
- 今ある課題を、“未来のリスク”として予防的に見ること
今のかんしゃく、自傷、他害、強いこだわりを、
「まだ小さいから」
「言葉が出ないから仕方ない」
で終わらせるのか。
それとも、今から関わり方や生活の組み立てを変えていくのか。
その違いは、5年後・10年後の家族の暮らしだけでなく、お子さん自身の“生きやすさ”にも直結します。
幼少期の今だからこそ、できる支援があります。
頭を打ちつける、親を叩く、物を投げる、激しいかんしゃくを起こす──
このような行動は、「まだ小さいから」と様子を見る課題ではありません。


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言葉が出ない、名前を呼んでも振り向かない、かんしゃくが激しい──。
実際のご家庭をもとに、出張療育がどのように始まり、親子がどう変わっていくのかを漫画で紹介しています。
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