子育てをしていると、正直「子どもが可愛くない」「好きになれない」と感じることがあります。
そんな気持ちを抱えて苦しんでいる親御さんに向けて書きました。
この記事では、支援歴10年以上の専門家が、現場で見てきたリアルな子育てと、その中で見えてきた解決のヒントをお伝えします。
我が子が可愛くない・好きになれない──それでも大丈夫です

受け入れられないというか、正直、愛情を持てずに苦しいです…
私の教育相談では、発達に特徴がある子や、知的な遅れがある子を支援することがよくあります。
お子さんが自閉スペクトラム症などの診断を既に受けている場合も少なくありません。
そんなお子さんを持つ親御さんは、我が子の行動が理解できず、
「子どもが可愛くない」「どうしても好きになれない」と悩むことがあります。
こうした親御さんの真剣な悩みに、私はこう答えます。



お母さん、それは“ダメ”じゃなくて、親としての伸びしろですよ



えっ?
これは慰めでも気休めでもなく、本気でそう思っています。
子どもが可愛くない、好きになれない──。
そんな気持ちは、人前ではなかなか言えません。
「親失格」と思われるのが怖いからです。
でも、私の出張カウンセリングでは、何度か話していくうちに、
「実は…」と勇気を出して打ち明けられる親御さんがいます。
そのとき、私は迷いなくこう答えます。
「あ、全然それで大丈夫です」
世の中の子育ては「子どもは可愛い」が前提──でもそれは作られたイメージです
紙おむつのCMやパッケージを思い出してみてください。
そこに出てくるのは、天使みたいに笑っている赤ちゃんや、かわいいキャラクターばかりです。
ふわふわの雲に虹がかかり、笑顔はまるで太陽のよう。
これが社会が作り上げた「子ども像」です。
でも、これは現実ではありません。
正しく言えば「作られたイメージ」です。虚構(フィクション)とも言えます。
私は毎日、支援の現場で子どもの本当の姿を見ています。
だから「子ども=天使」という幻想には、もう慣れっこです。
実際には、あの写真だって何百枚の中の奇跡の一枚でしょう。
残りは泣き顔や変な顔、時にはギャーと泣き叫ぶ「事件現場みたい」な瞬間もあったはずです。
それでも、この“天使のイメージ”が社会の標準になってしまいます。
するとどうなるか。
- 「子どもは可愛いはず」 → 可愛いと思えないのは親じゃない
- 「天使のすることは全部受け止めるべき」 → 受け止められないのはダメ親
この“無言の圧力”はとても強いものです。
だからこそ、「子どもが可愛くない」と思っても、外では絶対に口にできないのです。
我が子を可愛いと思えなくても仕方ない──なぜなら、子どもは「破壊者」だから
療育支援の現場では、親御さんとこんなやりとりをします。



じゃあ、本当のイメージは何ですか?



良い質問です!子どもの本当のイメージは『破壊者』です
……その場の空気が止まります。
でも私はそう教わりましたし、この仕事を続けるほど「子ども=破壊者」の確信は強くなっています。
さて、毎日の生活で、子どもはどんなことをするでしょうか。
- 物を壊す
- 人を叩く
- 噛む、唾を吐く
- 家を汚す
- 生活リズムを崩す
- 約束を破る
- うそをついて信頼を裏切る
ほら、全部そろえて「破壊」です。
「子どもが可愛くない」と悩む親御さんは、この現実と“天使のイメージ”のギャップに苦しんでいるのです。
子育ては理想のイメージではなく、現実をもとに考えることが大事です。
現実、つまり子どもは破壊者。
だからこそ、子どもを可愛いと思えない日があって当然なのです。
この前提に立てば、対応の筋道も見えてきます。
たとえば、相談の最中、私が大事な書類を子どもの手が届くところに置いたらどうなるでしょうか。
もし天使なら「はい、先生」と返してくれるかもしれません。
でも破壊者なら、落書きし、破り、口に入れてムシャムシャします。
なぜか?破壊者だからです。
だから私はこう考えます。
「そんなところに置いた時点で、私の負けです」
「子どもを叱っても意味がありません」
親御さんも、一緒に自分の頭を軽くコツンとやっておきましょう。
子どもとの付き合いは、本来こういうものです。
子どもを可愛いと思えない時──それでも支援で子育ての手ごたえは得られる
私の教育相談には、発達に特徴が強い子や、知的な遅れが大きい子も来ます。
そうした子どもたちは、親から見ると「よく分からない行動」や「生活をひっくり返すような行動」を毎日のようにします。
そんな環境では、子どもを可愛いと思えない、愛情が湧かない、許せない──そう感じても仕方がありません。
親御さんは毎日、そのギリギリのところで踏ん張っているのです。
私が出張カウンセリングでまず大事にしているのは、親御さんが、



私、やればできる!
という手ごたえを感じられることです。
実際にどのようなことをするか、過去の記事で例を紹介しています。
👉 自閉スペクトラム症や重度知的障害の子が“穏やかに過ごせる”自由時間のつくり方(前編)
👉 3歳児が外で急に走る──道路や駐車場での“飛び出し”を防ぐ練習と考え方
こうした実践的な練習に取り組み、成果が少しずつ見え始めると──



もしかして、私、結構うまくやれた?
と、自分をほめたくなる瞬間が出てきます。すると今度は──



次はどんなことをやりますか?
と前向きに聞いてくるようになる。
あれ…?
「子どもは可愛いと思えない」と言っていたはずなのに。
苦手だと思っていたはずなのに。(ここで私は静かにニヤリ)
子どもを好きになれない親 VS 溺愛する親──伸びしろがあるのはどちら?
我が子を可愛いと思えない。どうも苦手。
こういう親御さんは、子どもに過度な期待をかけません。
そして、生活の中で良くない行動があれば、しっかり「No」という感覚を持つことができます。
一方で、「子どもが可愛くて仕方ない」「どんな行動でも受け入れる」という親御さんもいます。
……正直に言えば、後者の支援はとても難しいのです。
たとえば夕飯の場面を想像してください。
さっきまでおいしそうに食べていたのに、突然「イヤダ!」と叫んで、
口の中の食べ物をペッとテーブルに吐き出す。
子どもは「破壊者」なので、ときに、こんな行動をしてしまうことはあります。
でも、いくら破壊者だからといって、親が「それは嫌だ」「受け入れられない」と思える感覚はとても大切です。
ところが、こんな行動ですら「うちの子がやったことだから」「受け入れられます」という親御さんもいるのです。
たとえば、こんな違いがあります。
- 「食べ物を吐くのはさすがに嫌だよ。せっかく作ったのに」
→ 改善への意欲があり、支援の提案も受け入れやすい - 「〇〇ちゃんは悪くない。きっと感覚が敏感だから…。私の味付けのせいかも…。ごめんね」
→ 子どもの行動をすべて正当化し、改善が進みにくい
前者の親御さんは改善へのモチベーションが高く、支援の効果も出やすい傾向があります。
後者は、不快な行動ですら「仕方ない」と受け入れてしまい、支援の提案を受け入れにくいのです。
実際にこんな“溺愛タイプ”のケースもありました。
- 叩かれても噛まれても、すべて受け止めます
- トイレを嫌がるので、ずっとオムツでも構いません
- この子が不快を感じたら、すべて私の責任です
ここまでいくと、相談自体が続けにくく、改善への道のりがとても遠くなってしまいます。
だからこそ、私は「子どもを好きになれない」「子どもが可愛くない」と感じる親御さんのほうにこそ、
伸びしろがあると言うのです。
子どもは「破壊者」だからこそ、すべてを受け入れる必要はありません。
「これは嫌だ」「ここは線を引く」という感覚が、子育てのバランスを守るのです。
我が子を心から嫌いな親はいない──だからこそ淡々と
子どもが天使みたいに見える瞬間なんて、人生で数回と、あとは寝ている時くらいでしょう。
実際には「破壊者」。可愛いと思えない日がほとんどです。
だからこそ、親は気負わずに、淡々と子育てを続けていけばいいのです。その結果──



まあ、成人まではしっかり面倒を見てやるか
という落ち着いた気持ちにたどりつくことを目指します。
その道しるべになることこそ、子育て支援者である私の役割だと思っています。
子どもが可愛くない、子どもを好きになれない日があっても、それは決してダメな親の証拠ではありません。
行動の課題や発達の悩みも、きちんとした支援者に相談すれば必ず突破口は見つかります。
子どもを可愛いと思えない、子どもの行動に辛さを感じている──
実際に効果のある支援方法を知りたい方は、こちらの記事もおすすめです。


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