早期療育で最初にやるべきこと——「一人遊び」が子育てにもたらす効果
私の出張相談の様子を、ある幼稚園先生に動画で見てもらう機会がありました。
出張カウンセリングの進め方を知ってもらうためです。
見終わったあと、先生は少し驚いた様子で、こう尋ねました。

このお子さんは、どうしてこんなに静かにしていられるんですか?
映像には、こんな場面が映っていました。
- リビングでお母さんとカウンセラーが、今後の方針を話し合っている
- そのすぐ近くで、未就園児の男の子が、おもちゃを広げて1人で遊んでいる
- 約30分、親にちょっかいを出さず、泣くこともなく、穏やかに過ごしている
先生が驚いたのも無理はありません。
こんな小さな子が、親に構ってもらえない状況でも、荒れることなく過ごしているからです。



もしかして、人に興味がないお子さんですか?
いえいえ、決してそんなことはありません。
実は、お母さんが相談を申し込まれたのは──
子どもが、母にまとわりついて離れられない
このような困りごとが理由でした。
実際、初回の相談では、母にしがみついて、何度も激しいかんしゃくを起こしていました。
言葉の遅れもありましたが、より深刻だったのは──
母に構ってもらえないときに暴れたり、大声を出したりする
こんな行動でした。
そんなお子さんが、2回目の相談時には親にまとわりつく様子がほとんど消え、
3回目以降は、一切見られなくなったのです。
もちろん、自然にそうなったわけではありません。
今回の記事では、背景を丁寧に解説していきます。
まず目指すのは「親から離れても平気」な状態
出張カウンセリングでは、最初に達成すべきシンプルな目標があります。
それは──
親から離れても、安心して1人で過ごせる
これを目指します。
もう少し詳しく説明すると──
- お母さんと先生が大事な話をしているときは、そこに割り込まない
- 1人で遊んでいれば大丈夫。怖いことはないし、すぐに呼んでくれる
- 話が終わったら、ほら今度は僕の番。すぐにお母さんのところへ行こう
こうした「切り替え」の練習を、初めての相談から行います。
これは、親にべったりなお子さんだけに必要な練習ではありません。
私の教育相談では、例外なく、すべてのご家庭でこの練習を行います。
それはどうしてですか?
もちろん、大人同士が話している最中に子どもが割り込んでくるようでは、
相談そのものが成り立ちません。
しかし、それ以上に大切な理由があります。
「一人遊び」や「切り替え」の習慣が定着することは──
その後の「育ち」にとても大きな影響があるからです
詳しく説明していきましょう。
「ちょっと待って」は通じない——親にまとわりつく行動が強化されるメカニズム
本来、親子が離れていた方が良い場面は、日常生活のなかにいくらでもあります。
台所で火を使っているとき、掃除をしているとき、夫婦で大事な話をしているとき。
そして、親がただひと息つきたい、そんなときだってあります。
ところが、子どもは親の都合なんてお構いなしです。
特に、知的な遅れや自閉症状のあるお子さんにとっては、
「ちょっと待ってね」という声かけ自体、効果がないことがほとんどです。
すると、何が起きるでしょうか。
- 泣く
- 騒ぐ
- 怒る
- まとわりつく
親の注意を引くためには、こんな行動のほうが、
「より確実で効果的な手段」になってしまいます。
その結果、かんしゃくや接近行動が、
親の反応によって繰り返し強化されていくのです。
そんな習慣が積み重なっていくと──
- 何かあるたびにすぐ泣き叫ぶ
- 常に抱っこを求めてくる
- 少しでも構ってもらえないと大声を出す
このように、“興奮を人に向ける行動”が、ますます習慣化していきます。
こんな状態が当たり前になると、言葉の発達や他者との関係づくりにも影響が現れます。
そして──
もう、どうすればいいのか分からない…
と悩んだ保護者が、私の相談室にたどり着くことになるのです。
子どもにとって、一人遊びは大切な“スキル”です
親が子どもに関われない時間は、どんな家庭でも日常的にあります。
そうした場面を、完全になくすことはできません。
それでも──
こんな思い込みが強くなると、常に親が子どもの要求に振り回され続ける状態になります。
子どもが泣けば応じ、騒げば対応する。
その積み重ねで、生活全体が“子ども主導”になってしまうということです。
これが親にとっても、子どもにとっても、どれだけ好ましくないことか、
10年以上、家庭への直接支援を経験している私は、痛いほど分かっています。
では、そんなとき、子どもはどう過ごせばいいのでしょうか。
その答えが──
一人遊びです
親にべったりとまとわりつかず、興奮して大声を出すでもなく、静かに1人で遊ぶこと。
障害の有無は関係なく、幼児期に身につけておきたい、大切な生活スキルのひとつです。
そして、スキルである以上──
「そのうち自然にできるようになるだろう」とは考えません。
子どもにとって必要な力なら、大人が環境を整え、丁寧に教えていく。
その姿勢が、とても重要になります。
一人遊びの習慣が身についてくると──
- 言葉やコミュニケーションが育ちやすくなる
- ちょっと興奮しても、自分で落ち着くことができる
- 他害や過度な依存といった行動上の問題の予防にもつながる
一石二鳥どころか、三鳥、四鳥にもなります。
この「1人で遊ぶ力」は、
子ども自身が安定して育っていくための、確かな土台になるのです。
終わりに——早期支援は、親の成長にもつながる
今回取り上げた「一人遊び」は、一見すると地味なテーマに感じられるかもしれません。
しかし、すべてのご家庭で、初回の相談から練習を始めるほどですから、
幼児期支援の中でも最重要課題と位置づけています。
この記事の中で、私は「練習」という言葉を何度も使いました。
それは、一人遊びに限らず、子育てそのものが練習の積み重ねだと考えているからです。
適切な関わりのもとで練習を重ねれば、親も子も、確実に変わっていきます。
親御さんの成長に立ち会えること。
それこそが、私がこの仕事を続けている理由です。
一方で、世間で語られる“良い子育て”が、
いつの間にか「子どもに振り回されること」になっている場面も、少なくありません。
この記事の内容に違和感を覚える方がいるのも、自然なことだと思います。
価値観が合わなければ、無理に読み進める必要はありません。
もし──
一緒に子育ての練習をしてみたい
そう感じられた方は、ぜひ他の記事も読んでみてください。
早期支援が大切なのは、子どもの発達のためだけではありません。
親が育つことこそが、結果的に子どもを育てる。
私は、そう考えています。
お母さんの足にコアラのようにしがみつく!?
我が子が離れられなくて困ってしまった事例はこちらから。


「せめてトイレくらい行きたいのに…」
ママにべったりはどうすればいいのか、こちらの記事でも紹介しています。


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- 対象年齢: ご相談時点で3歳未満のお子さま
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