お風呂を拒否する子に、親はどう接すればよいか──親の「主導権」の大切さ

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「お風呂入る?」はNG?イヤイヤ期の拒否を招く“伺い立て”のワナ

家庭への出張療育を10年以上続けていますが、「お風呂」に関する相談は非常に多く寄せられます。

例えば──

そろそろ、お風呂入らない?

イヤダ!


このように、お風呂に誘導しようとしても、即座に拒否されてしまうというお悩みです。

本気で嫌がるそぶりを見せることもあれば、ニヤニヤしながら走り回ることもある。もしかして“追いかけっこ”を楽しんでいるのかも……。

さて、どうしたものでしょうか。


ここで、親御さんに確認してみましょう。

“1日くらいお風呂に入らない”は、アリですか?ナシですか?

それはナシです。毎日泥だらけになっていますし。

なるほど、世間で言う”風呂キャンセル界隈”ではないということですね。それなら話は早いです。


親御さんの答えが「ナシ(絶対入る)」であるならば、そもそも「お風呂に入る? 入らない?」と、子どもに伺い立てる必要はないわけです。

なぜなら、選択肢は『入る一択』だからです。

ということは、「お風呂入る?」という疑問形ではなく、「お風呂入ろう」と指示する言い方で接する必要があります。

これは、たかが言葉尻ではありません。この後大切になってくる、親御さんの”覚悟”につながってくるからです。

大人の声かけにきちんと反応できることの大切さについては、こちらの記事も参考になります。
👉「名前を呼んでも振り向かない」2歳・3歳──反応しないのは“性格”ではありません

親が本当に困っているのは、入らないことではなく「切り替わらないこと」

さて、親御さんにお話を伺うと、お風呂に入れるために“あれこれ”と工夫(苦労)されていることが多いです。

ご褒美で釣ってみたのですが、ダメでした

どんなふうにやったのですか?

「お風呂に入ったらパイの実あげるよ」って声をかけます

なるほど……。

残念ながら、このパターンでは声をかけてもダラダラが続いたり、追いかけっこが始まったりと、ひと悶着が起こる未来が目に浮かびます。


ここで、困りごとを一度整理してみましょう。親御さんが本当に苦戦しているのは、「お風呂に入らないこと」ではありません。

声をかけても、ササッと行動を切り替えてくれないこと

つまり、入浴そのものではなく、その「手前の問題」なのです。

また、ご褒美が遠すぎるという問題もあります。

たとえば、親御さんの呼びかけに反応して即座に脱衣所に来たとしても、子どもが実際にパイの実をゲットできるのは、そこから20分後かもしれません。

それならまずは、すっぽんぽんでリビングを走り回って、お父さんと追いかけっこする方が、よっぽど楽しいかもしれません。どうせお菓子もゲットできるでしょうし。

そして、最初は我慢していた親御さんも、いよいよ業を煮やし、とっ捕まえてお風呂に連れていくという流れになります。 

パイの実を使うなら、こう使う──2つの選択肢をはっきりさせる

せっかく「パイの実」というご褒美を用意しているのなら、もっと良い提案ができます。

ということで、私が親御さんにある方法を授け、それを実行に移していただきます。

脱衣所から──

おーい、パイの実食べる?

食べるー。
(でもリビングから動かない)

(パクッ)うん、旨い。

!?

はい、お父さんが食べちゃいました。そしてお父さんはムシャムシャと美味しそうに食べながら、そのままお風呂へ連れていきます。

当然、子どもは火がついたように怒ります。でも、それでいいんです。そうなることは最初から分かっていましたし、その時にかける言葉も決めていました。

また明日があるよ

たったこれだけです。


これまでの「ダラダラして、最後に叱られてお風呂」という流れと、何が違うのでしょうか。

お子さんの前には、2つの選択肢がはっきりと提示されました。お父さんに呼ばれたとき──

  • すぐに脱衣所に行って、パイの実をゲットし、お風呂に入るか
  • パイの実をゲットできず涙を飲み、お風呂に入るか

この2択です。

どちらを選んだとしても、最終的なゴールは「お風呂」ですが、そのプロセスを決めるのは子ども自身になります。

「怒らなくて済む」のは、親が主導権を握っているから

この作戦を実行するにあたり、親御さんにはあらかじめ大切なポイントをお伝えします。

  • 子どもが①と②のどちらを選んでもいい
  • もし②になっても、親は絶対に怒らない
  • 最終的にお風呂に入ることには変わりない

このあたりを納得するまで丁寧に説明します。
ここで大人に求められるのは──

どうぞご自由に選んでください♪(①をおすすめしますが…)

という態度です。ついつい、「早く来れば良かったのに……。」と言いたくなりますが、それはNGです。

子どもには、自分の選択による「因果応報の結果」がダイレクトに訪れることが大切なんです。


実は、パイの実をゲットできるタイミングも、厳密に定義しています。

脱衣所に来て、服を脱ぎ、足が風呂場の敷居を越えて、ドアが閉められた瞬間

ここまでやって、ようやくゲットです。

「脱衣所まで来たらあげる」といった曖昧なルールだと、パイの実を口に入れた瞬間に、全裸でリビングへ逃走されるリスクがあるからです。


お母さんには記録係をお願いし、お父さんがパイの実を食べた日(=子どもが切り替えられなかった日)には、カレンダーに「✅」をつけてもらいました。

その後の相談でお話を伺うと……。

どうなりましたか?

初日と4日目、あと12日目に✅がつきました。そこからは、成功が続いています!

「お風呂の入れ方」よりも大切な、親としての確固たる態度

さて、最後は少しだけ厳しいお話をさせてください。

私が今回お伝えしたかったのは、単なる「お風呂に誘導するための小手先のテクニック」ではありません。

相談当初、親御さんは「ねぇ、お風呂入る……?」と、お子さんの顔色を伺うような態度でした。

しかし、安全・健康・衛生を守るという場面において、親が子どもに伺い立てる必要なんて全くないのです。

時には、竹を割るかのように「はい、やりましょう!」と毅然とした態度で接する。

子どもにおもねるのではなく、親が責任を持って方向づけてあげる。

この視点の大切さを、親御さんに伝えたかったのです。


もしかすると、ご褒美をゲットできない(親が食べてしまう)なんて「かわいそう」と感じる方もいるかもしれません。

ですが、その考えは全くの的外れです。

子どもの気分次第で「やる・やらない」が左右されることが日常になれば、親は常に振り回され続けることになります。

すると親も、その時の機嫌や疲れ具合で、対応がコロコロ変わってしまうようになります。

一貫性のない対応の中で、親子で疲弊していく―― 。

そんな子育てが続いていくことの方が、よっぽど不幸で「かわいそう」なことではないでしょうか。


今回のような対応は、子育てに真摯に向き合いたいと願う親御さんだからこそ成立するものです。

耳の痛いアドバイスを真剣に聞き、我が子のために良い環境を作ろうと努力する。その強い思いがあって初めて、子どもに変化が訪れます。

あえて最後にお伝えしますが、今回の記事を表面だけ真似しても、おそらく上手くいきません。

実際の支援では、それぞれの家庭環境や親子のやり取りを直接見た上で、最良の方法をお伝えしているからです。

「手っ取り早いテクニックだけを知りたい」という方ではなく、我が子のために「親としての態度」を変える覚悟がある。

そのような方を、私は全力で支援したいと考えています。

子どもの安心・安全を守るとき、毅然とした態度が必要なことは、こちらの記事でも紹介しています。
👉3歳児が外で急に走る──道路や駐車場での“飛び出し”を防ぐ練習と考え方


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