「嫌い!」「イヤだ!」を繰り返す子の偏食|食卓で本当に教えたいのは言葉だった

アイキャッチ
目次

偏食・少食が改善しない本当の理由とは?「調理の工夫」の前に必要なこと

約15年、療育の仕事をしていますが、「食事の悩み」は、言葉の遅れに次ぐほど大きなテーマの1つです。

偏食で、まったく食べてくれなくて…

苦手な食べ物を見ただけで、大声が出てしまって…

保護者や保育の先生から、こうした相談は、日常的に寄せられます。

相談をくださる方のほとんどが、まず「どうやって食べさせればよいか」を考えています。

量、出し方、味付け──

試行錯誤しても、うまくいかず、相談に来られる方が多いです。

そういう方に、私はよくこんなふうにお伝えします。

まず「言葉」から直していく必要がありますね…

最初は「?」という顔をされます。食事の話をしているのに、なぜ言葉の話?と。

でも、ここに大きなヒントが隠れています。

もう少し具体的に見ていきましょう。


給食を拒否して大騒ぎする子どもへの視点|「食べる・食べない」は問題ではない

たとえば、こんな場面を想像してみてください。

家では唐揚げを普通に食べているのに、保育園の給食になると、まったく手をつけない。

それどころか──

「ギャー!」「嫌いー!」と大声で叫んだり、椅子から降りて逃げ出したりする。

このような相談は、少なくありません。

ここで多くの方は、「偏食かな?」「味付けかな?」と考えます。でも、ちょっと待ってください。

相手は小さい子どもです。

苦手な食べ物が給食に出ること自体は、よくあることです。「食べられない」ことは、最初から想定内です。

でも──

「ギャー!」と大きな声を出したり、走って逃げる必要は、あるでしょうか?

言われてみれば…確かに。

「食べる・食べない」だけが問題ではないのです。

その場面でどんな言葉を使い、どう振る舞っているか。そこにも、注目する必要があります。


ついやっていませんか?ネガティブなやり取りが偏食をエスカレートさせる仕組み

なぜこのネガティブな言葉は止まらないのかというと──

これ嫌い!

そんなこと言わないでよ…

食べない!(プイッと顔をそむける)

一口くらいなら…

イヤダ!(と、走り出す)


これが何ターンも続いてしまいます。
その理由を2つ挙げましょう。

1つは、このやりとり自体が、子どもにとって”おいしい”からです。

苦手なものを食べずに済む、先送りにできる。しかも先生やお母さんが、自分に集中してくれる。

ごはんよりも、このやりとりの方が、ある意味で”お得”なんです。

もう1つは、ネガティブな言葉が、次の行動のきっかけになってしまうからです。

「嫌い!」と言えば(プイッ)となり、「イヤダ!」と言えば(逃げる)につながる。

しゃべればしゃべるほど興奮してヒートアップし、ますます厄介な行動のきっかけになります。

つまり──

ネガティブな言葉が出ている限り、食事どころではなくなります

「食べる・食べない」の話ではないとは、こういうことなんです。


【実践】苦手なものを克服するスモールステップ|言葉の力を活用した支援術

「でも、嫌いなものが目の前にあるんだから、“イヤ”って言うのは仕方ないのでは?」

そう思われるかもしれません。

──いえいえ、そこは大人の出番です。

知恵と工夫、そしてユーモアで乗り越えていきましょう。

「青い野菜が大嫌い」というお子さんがいます。
今日の給食メニューの中に、「ゆでブロッコリー」があるとします。

さて、どうするか。

ここで、いきなりひと房出したら——
まあ、ほぼ確実に「イヤ!」が出ます。

ですから、こうします。


はい、ブロッコリー♪

そう言って、フォークを口元に運びます。ただし、子どもにはブロッコリーはほぼ見えません。

フォークの先についているのは、よく目を凝らさないと分からないくらいの「ブロッコリーの繊維」だからです。

先生方からは、たいていこう言われます。

いや、付いていないですよね💦

でも私は言い切ります。

いえ、付いています!(1ミクロンくらいは)

※1000分の1ミリです。


……問題は、そこではありません。

大切なのは、量ではなく“言葉・コミュニケーション”です。

今、何食べたの?

ブロッコリー!(だったの?)

へぇ、おいしいよね!?

おいしい!(のかな?)

また食べたいねー

食べたいねー(何を?)


間髪入れずに、ポジティブな言葉をやりとりしていきます。

ふざけているように見えるかもしれませんが、これは大真面目な支援です。

食べ物を前に絶叫してしまう子どもには、まず「健康的な言葉のやりとり」から教えていく。

『おいしい!』という言葉が、自然に出てくることを目指すのです。


「また一緒に食べたい」と思われる子になるために──食事を通して教えたい、愛されるコミュニケーション

本来、食事のときに使ってほしい言葉は、とてもシンプルです。

「おいしい」「これ食べた」「おかわり」

こんな言葉が自然と出てくる子どもを見て、大人は「可愛いな」と思います。一緒にご飯を食べたくなります。「また作ってあげよう」と思います。

逆に、ネガティブな言葉は、場の空気が重くなりますし、実はみんなが内心うんざりしています。

せっかくの楽しい食事が、みんなにとってつらい時間になってしまう。
それは、その子自身にとっても損です。

幼少期からポジティブな言葉で人と関わる習慣は、学齢期や青年期の土台になります。

食事の場面ではありますが、これはコミュニケーションの練習でもあります。

何でもかんでも拒否や否定から始まるコミュニケーションスタイルは、やはり嫌われてしまいます。

どんな言葉を使う子になってほしいか──

私は、「おいしい」「もっと食べたい」といった言葉が自然に出てくる子になってほしいです。

これは技術・技法以前にある、私の価値観です。


偏食対応の新しい視点|「どう食べさせるか」の前に「どう話させるか」が重要な理由

食事の支援をする際に、「どう食べさせるか」だけではなく「どう喋らせるか」に着目する──

今回は、そのような視点でお伝えしました。

もちろん、「どう食べさせるか」も大切です。

1ミクロンという表現は誇張ではありません。
絶対に「イヤ」と言わせない量で、堂々と「ブロッコリーだよ」とお口をパクッと開ける。

特に食事では、失敗させず、必ず飛び越えられるハードルを用意してあげるという視点が大切です。

具体的な支援の場面については、過去記事でも紹介しています。ぜひ参考にしてください。

あわせて読みたい
給食を食べない園児への支援──先生が本当に困っているのは“食事”ではない 給食を食べない。それどころか大暴れ──一体なぜ? 給食を食べない園児の相談は珍しくありません。 「ごはん、スープ、サバの塩焼き、ほうれん草ともやしのごま和え、り...

偏食をきっかけに相談を依頼されたケース。でも本当の問題は偏食ではなく…。必見です。

あわせて読みたい
「ふりかけがないと食べない」からの脱却──“偏食”ではなかったA君と親の再スタート 「保護者の声」シリーズ第3回です 「保護者の声」シリーズでは、親御さんのリアルな声を一切編集せず、そのままの形でお伝えしてきました。 👉 早期発達支援のあるべき...

当相談室では、言葉の遅れや行動上の課題など、子育ての悩みを家庭に出張して支援します。
お問い合わせはこちらからどうぞ。

あわせて読みたい
「こども療育相談室ぷろんぷと」相談申し込みの流れ──お問い合わせから出張カウンセリング開始まで 相談してみたいけど…どうやって申し込めばいいんですか? それでは順番にご説明します。 ①お問い合わせ 最初は何をすればいいですか? まず 「お問い合わせページ」 か...
当相談室のご案内
  • 対象年齢: ご相談時点で3歳未満のお子さま
  • エリア: 千葉県・東京都を中心に出張対応
  • 支援方法: 応用行動分析学(ABA)に基づいた支援プランを個別にご提案
  • サポート内容: ご家庭での療育支援、親御さんへの具体的アドバイス

📩 お問い合わせは下記フォームよりお願いいたします。

目次