療育支援を10年続けて見えてきたこと──幼少期から支援に向き合った親御さんたちの歩み

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開業から10年。幼少期に出会った子たちが、今はもう中学生に

「こども療育相談室ぷろんぷと」を開業して、もうすぐ丸10年になります。

最初の頃に出会ったお子さんたちの多くは、今や中学生や小学校高学年に。
時の流れの早さに驚かされます。

ここ最近、当時の相談記録を改めて見返す機会がありました。
そして思ったのは──

いやぁ、なかなかシビアだったな……

ということです。

言葉が出ないのは当たり前、家の中で親御さんを叩いたり、家具を壊したり、叫び声が何時間も続いたり。
強度行動障害と判定されてもおかしくないケースが、いくつもありました。

それでも、支援を継続しながら歩んできたご家庭は、今、それぞれの形で落ち着いた生活を送られています。

今回は、そんな10年の間に感じたことを、少しだけ振り返ってみようと思います。
事例紹介というよりは、「のんびりとした回顧録」として、お付き合いいただければ幸いです。


「あの頃は大変でしたよね」──でも今は、落ち着いた日々の中に

2歳の頃は月に数回のペースで支援を行っていたご家庭も、
小学生以降になると、数か月に1回、あるいは年に数回など、支援の頻度は落ち着いていきます。

幼少期からコツコツと支援を続けてきたご家庭は、やはり今、とても安定しています。

暴れたり、物を壊したり、大声を出したりといった行動は見られなくなり、
親御さんにまとわりつくこともなく、きちんと1人で過ごせるようになっています。

自分の好きなことや趣味にも、じっくり取り組めるようになりました。

あるケースでは、幼少期の様子を動画で一緒に振り返ることもあります。
動画には、激しいかんしゃくや、日常生活に支障が出ていた当時の様子がしっかりと記録されています。

それでも親御さんは、懐かしむように、どこか笑いながらこうおっしゃいます。

あぁ〜、こんなこともありましたよね〜

私としては、

いやいや、血も涙もいっぱい流しましたよ……

とツッコミたくなるくらいですが(笑)
そうした“昔話”ができるようになっていること自体、とても尊い変化だと感じます。


一番大切だったのは「言葉」ではない──穏やかな生活を送るために必要なもの

こうした話をする中で、私から親御さんに、ある質問を投げかけることがあります。
それは──

これまでを振り返ったとき、生活の安定のために一番大切だったものは何でしたか?

軽いインタビューのような形でお聞きするのですが、
ほとんどのご家庭が、このように答えられます。

親にべったりにならず、ひとりで過ごせる力ですね

イライラしても、それを親に向けず、子どもが自分で落ち着けるようになることです

つまり、「一人で過ごす力」。
これこそが、どのご家庭からも真っ先に挙がるキーワードなのです。

これ、ちょっと不思議に思われるかもしれません。
なぜなら、幼少期の療育の相談は、ほとんどの場合「言葉の遅れ」をきっかけに始まるからです。

もちろん、言葉の発達も大切なテーマに変わりはありません。
けれど、「穏やかに暮らせるために何が大事だったか」という問いに対しては、

「一人で過ごす力」

のほうが、多くの親御さんにとっての答えになっているのです。


「一緒に暮らせなかったかもしれない」──親御さんの言葉が教えてくれること

  • イライラしても、その矛先を人に向けない
  • 親子が離れるべきときは、きちんと離れる
  • そうすることで、情緒が安定し、人との関わりも上手になる

これは、過去の記事で何度もお伝えしてきたテーマです。

👉“1人で遊べる子”は伸びる──早期療育で最初に身につける力とは
👉2歳児がママにべったりで離れないときに。「親から離れる練習」のはじめ方

ある親御さんは、こんなふうにお話しくださいました。

もし、子どもが一日中まとわりつくあの生活が続いていたら、
小学生になる前には、間違いなく一緒に暮らせなくなっていました。

この言葉は、決して大げさではありません。

こうした言葉を親御さんの口から直接聞くようになって、
私としては、「答え合わせをしているような気持ち」になることがあります。

どういうことかというと──

1歳後半や2歳の頃、こだわりやかんしゃくで親御さんを振り回していた子が、
学齢期になった今、穏やかに日々を過ごし、自分の趣味に黙々と取り組めるようになっている。

幼少期からずっと親御さんに伝え続けてきた、

一人で過ごす力は大切ですよ

というメッセージが、
今、実際に「その通りだった」と実感されている──

教育相談の中でも「やっぱりそうだったね」と、
お互いに答え合わせができる瞬間が、確実に増えてきたのです。


支援の裏にあった、親御さんたちの痛み

相談を始めてから年月が経ち、これまでのことを改めてお聞きする機会が増えました。
その中には、思わず胸が詰まるような「新しい事実」もあります。

特に心に残ったのは──
お子さんが幼かった頃、親御さんが支援を求めて訪ねた先で浴びせられた心ない言葉でした。

「この子は何もできない子です」
「頭おかしいですよ」

嘘みたいに思われるかもしれませんが、これ、本当の話なんです。

助けを求めて相談したはずなのに、支援者からそんな言葉を受ける。
どれほど深く悲しんだことか、そして悔しかったでしょうか。

特に、知的発達の遅れや行動上の課題をもつお子さんは、誤解や偏見の矢面に立たされやすいです。
そこに追い打ちをかけるように、不勉強で支援策も立てられない支援者からの暴言。

残念ながら、これもまた現実です。

私は、教育相談の最中に涙を流すことはありません。
でも、こうした話を聞いたときには、奥歯を強く噛みしめて、こらえることもあります。


支援をつないでくれる、親御さんたちの想い

最近、新たに支援を始めたご家庭では、私の過去の支援動画をご覧いただくことがあります。
もちろん、使用している動画はすべて、先に支援を受けられたご家庭から許可をいただいたものです。

使用の許可をお願いすると、皆さん本当に快く、
「どうぞどうぞ」と笑顔でおっしゃってくださいます。

それどころか、こんな言葉をいただくことがあります。

以前の我が家のように、今困っているご家庭の支援に、ぜひ役立ててほしいです

先生の支援のためになるなら、ぜひ使ってください

これから支援を受ける親御さんにとって、
フィクションではない“実際の支援の様子”を見ることは、言葉にならないほどの励ましになります。

私の仕事は、決して私一人の経験だけで成り立っているものではありません。
こうした親御さんたちの心遣いと想いに、日々支えられながら続いているのです。


私が支援の仕事を続ける理由

一個人として仕事をしている私にとって、
大勢の方を支援することは、現実的にはできません。

それでも──
なぜ、この仕事を続けてこられたのか。

理由は、とてもシンプルです。

あれほど大変だったご家庭が、
今は穏やかな暮らしを送っている。

そこに、ほんの少しでも自分が関われたのなら、
それだけで、この仕事を選んだ意味があるように思えるのです。

家庭に出張して行う支援は、決して楽なことばかりではありません。
ときには、親御さんにとって耳の痛いことを伝えなければならない場面もあります。

それでも、日々、子育てに真剣に向き合う親御さんの力になれるのなら。
その気持ちが、私をまた次のご家庭へと向かわせてくれる原動力になるのです。


出張カウンセリングのリアル、現場の空気感について知りたい方は、
こちらの記事が参考になります。

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当相談室のご案内
  • 対象年齢: ご相談時点で3歳未満のお子さま
  • エリア: 千葉県・東京都を中心に出張対応
  • 支援方法: 応用行動分析学(ABA)に基づいた支援プランを個別にご提案
  • サポート内容: ご家庭での療育支援、親御さんへの具体的アドバイス

📩 お問い合わせは下記フォームよりお願いいたします。

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