給食を食べない園児への支援──先生が本当に困っているのは“食事”ではない

アイキャッチ
目次

給食を食べない。それどころか大暴れ──一体なぜ?

給食を食べない園児の相談は珍しくありません。

「ごはん、スープ、サバの塩焼き、ほうれん草ともやしのごま和え、りんご」
——栄養バランス完璧な給食を見て、4歳の子どもが大爆発する。

子どもが給食を食べてくれません……

幼稚園の先生からの相談も日常茶飯事です。


今回は、出張カウンセリングではなく、
幼稚園や保育園での食事(食行動)へのアプローチです。

なぜ“家庭でうまくいかないこと”が園ではもっと難しくなるのか?
保育の先生方が頭を抱える「子どもが食べてくれない」の背景に何があるのか。

先生方への支援(コンサルテーション)の現場からお伝えします。


給食を食べない子どもへの支援──まずは“実態調査”から

ご家庭であっても幼稚園であっても、“食べない”に対応する支援の原理・原則は変わりません。
その原点になるのが、「実態調査」。
専門的には「生態学的アセスメント」と呼ばれるアプローチです。

参考記事
👉「うちの子、なぜか食べない──偏食・少食の背景と支援の始め方」


たとえば、こういった情報を事細かく調べていきます:

  • その子はふだんから何を食べているのか?
  • それを誰が・どこで・どんなタイミングで提供しているか?
  • 食べたくないメニューが出たとき、どんな行動が出るか?
  • それに対して、大人はどう対応しているのか?
  • 間食は?時間は?休日と平日の違いは?

こんなことを事細かく調べます。先生方からすると──

えっ、そんなに細かく?そこまで調べなきゃダメ?

と思われるかもしれません。

でも、実際の様子がイメージすらできない“闇雲の状態”では、到底支援はできません。
それは足のサイズも測らず、試し履きすらせずに、靴を買うようなものです。

どこかで必ずズレてしまうのです。


実態調査ってどんな感じ?

では、もう少し具体的にお話しします。
例えば、私とお母さんとの間でこんなやりとりがあったとします。

偏食とのことですが、昨晩何を食べましたか?

アイスクリームとチョコクロワッサン。あとパパがコンビニで買ってきたフランクフルト…

なるほど…。では、ご飯やお味噌汁を出したら?

絶対に食べません。たぶん、大声を出して怒ると思います。


こんな実態が分かってきたらどうでしょうか?
今までは「どうして食べないんだろう?」という“疑問”が、

そりゃ給食なんて食べないはずだ…。

という、“必然”に変わるのです。


一見“ただの偏食”に見える問題も、調べてみると──

  • 実はお迎えのたびに祖父母がコンビニスナックを買っていた
  • 戸棚から菓子パンを取り放題の状態だった
  • 朝起きるとカップアイスを食べることが習慣になっていた
  • 親が出したメニューにいちいち文句を言って、別のものが出てくる

…など、生活のどこかに「食べない理由」が隠れていることがほとんどです。

だからこそ、支援はまず“調査”から。
ここを丁寧にやれるかどうかで、支援の成否が決まります。


給食メニューに“戦略”を仕込む──行動支援の設計図づくり

家庭での様子は分かりました。
もちろん、幼稚園での様子も事細かく確認します。

  • どのメニューから順番に手をつけたか
  • どのくらいの量を口にしたのか
  • そもそも、まったく食べなかったか

など、先生から聞き取りしますし、可能な限り私も立ち会います。
さらに給食のメニュー表を広げて──

  • 完食できたもの
  • 一口だけ食べたもの
  • まったく手をつけなかったもの

など、グループごとに色分けしていきます。

こんなことをしていくと、その子の食行動の傾向がほぼ把握できます。
そうしてようやく、支援の準備が整います。


明日の給食ですが、最初は「もやしのナムル」をこの量で出してください

分かりました。その次はどうしましょう?

「ヨーグルト」です。スプーンですくってこんな感じで食べさせてください。その次は「チキンカツ」です。これは……


このように、量、順番、与え方、声の掛け方など、具体的な進め方を先生と共有します。
その子向けの数ページにわたる資料を作成することだってあります。

はっきり言って、大変骨の折れる作業です。
このような支援は、現場の先生の並々ならぬ熱意や根気がないと到底実現できません。


幼稚園での食事支援は、家庭よりはるかに難しい

普段私が行っている出張カウンセリングと比べて、
集団保育の場面で行う食事支援は、さらに難易度が高いです。

私の出張カウンセリングでは、お子さんの年齢はお問い合わせ時点で3歳未満と低年齢です。
家庭への直接支援ですから、普段の家庭環境も手に取るように分かります。

実際の食事場面で私がお手本を見せることも容易ですし、
何より、親御さんが改善に向けて積極的に取り組んでくれます。

一方、幼稚園では──

  • 年少児でも、もうすぐ4歳になるお子さん
  • 食行動の課題が年単位で習慣になっている
  • 子ども一人ひとりに個別で関われる時間が限られている
  • 家庭での実態が見えにくい

このように、偏食・少食の背景にある“学習された行動”が、かなり根深くなっており、
それを“集団の中”で、しかも限られたリソースの中で変えていかなければなりません。

これは、家庭支援とはまったく違う難しさがあります。

偏食・少食の背景にあるのは、“一時的な気まぐれ”ではなく、
年単位で築かれた生活習慣=学習の積み重ねです。

それを幼稚園の先生たちが、心折れそうになりながらも毎日、粘り強く奮闘されています。
厳しい表現ですが、まるで長年の借金を先生たちが代わりに返済しているようにすら見えます。

幼稚園の先生たちは、保護者のお迎えの時はニコニコしているかもしれません。
でも、その裏で頭を抱えていることを私は知っています。


先生が本当に困っているのは、“食事”そのものではない──給食支援の本質

ここまで食事の話を中心に書いてきましたが、
幼稚園の先生が本当に困っているのは、実は食事そのものではありません。

「お野菜がちょっと苦手で…」
「牛乳がどうしても…」

この程度の悩みなら、忙しい先生方は私に相談なんてしてきません。
そんなのは、むしろ“日常茶飯事”です。

では、どんなケースで支援が必要になるのでしょうか?それは──

  • 食事の声かけに完全に反抗する(拒否)
  • メニューが気に入らないとかんしゃくを起こし、保育がストップする(興奮)

つまり、「食べない」という行動の背景にある、

  • 大人の指示に応じられない
  • 些細なきっかけで爆発する

という、もっと根っこの課題こそが、先生の本当の困りごとなのです。

場面そのものは給食であったとしても、
実際にやっている支援は「ソーシャルスキルトレーニング」なんです。

そしてそのスキルは、入園前に準備できるはずだったものがほとんどです。

この視点については、過去の記事でも触れました:
👉 幼稚園に入る前に“断られる練習”を!──思い通りにならない経験が親子を強くする理由


先生に頼りきる前に──家庭でできる“早期の一歩”を

食事支援の現場にいると、よく分かることがあります。
それは、「食べてくれない」「好き嫌い」など表面の問題に目を奪われてはいけないということです。

実際にやっているのは、偏食を治すことではなく──
「大人の指示を受け入れる」「思い通りにならない状況を経験する」

つまり、社会生活を送るためのスキルを育てる支援=ソーシャルスキルトレーニングです。

これを、あの忙しい保育の現場で、
一人ひとりの子どもに向き合ってくださる先生がいる。

もしそんな先生に我が子を担当してもらえたのなら、それは“幸運”以外の何物でもありません。

「気づいたら、うちの子もだんだん食べられるようになっていた」
そんな変化があったとしたら、それは園の先生の努力の結果です。

目に見えないところで、先生方がどれだけの工夫をしてくださったか──
どうか、そこに感謝の気持ちを持っていただきたいと思います。


もちろん、最善は深刻な状態になる前に手を打っておくことです。

発達支援や食事支援は、早ければ早いほど成果が出やすいものです。
偏食や少食の支援では、数日で劇的に変わるケースも少なくありません。

それが、私が早期発達支援の大切さを繰り返し伝えている理由です。

支援は、“問題が起きてから”よりも、“起きる前に”始めた方がずっとスムーズです。

そして何より、そうした予防の視点をもって支援を求めてくださるご家庭と、一緒に歩みたい。
それが、私がこの仕事を続けている理由でもあります。


食事については、こちらの記事にも詳しく書いています。

あわせて読みたい
「ふりかけがないと食べない」からの脱却──“偏食”ではなかったA君と親の再スタート 「保護者の声」シリーズ第3回です 「保護者の声」シリーズでは、親御さんのリアルな声を一切編集せず、そのままの形でお伝えしてきました。 👉 早期発達支援のあるべき...
あわせて読みたい
うちの子、なぜか食べない──偏食・少食の背景と支援の始め方 子どもの「食べない」悩みに向き合う前に知っておきたい“たった一つの前提” 子どもがごはんを食べてくれません。すぐに立ち歩いてしまいます… こうした“食べてくれない”...

当相談室では、臨床経験豊富な専門家がご家庭に出張して支援します。
お問い合わせはこちらからどうぞ。

当相談室のご案内
  • 対象年齢: ご相談時点で3歳未満のお子さま
  • エリア: 千葉県・東京都を中心に出張対応
  • 支援方法: 応用行動分析学(ABA)に基づいた支援プランを個別にご提案
  • サポート内容: ご家庭での療育支援、親御さんへの具体的アドバイス

📩 お問い合わせは下記フォームよりお願いいたします。

目次