問題行動はどう直す?──支援の正しいスタート地点
前回、「問題行動は無視してください」という、いわゆる“教科書通りのアドバイス”が、
実際の子育てでは到底無理な話であること、かえって状況を悪化させることをお伝えしました。
前回記事はこちら
👉「問題行動は無視してください」なんて無理です──子育てを困難にする“教科書支援”の落とし穴
でも、大丈夫です。今回は、「無視」とはまったく真逆の方法をお話します。
いわゆる問題行動への対処について、健康的でポジティブな関わり方をご紹介します。
問題が起こってから何とかしようという後追い型ではなく、
困った行動を根本から減らすための、具体的な“解決のヒント”を一緒に見ていきましょう。
今回の記事では、実際の相談場面の雰囲気が少しでも伝わるように、
支援者(私)とお母さんのやりとりから始めます。
前回同様、夕方、お母さんが忙しい時間帯にまとわりつく場面を例にします。
では、解決編のスタートです!
夕方ワンオペが“趣味の時間”に激変!──問題行動を生まない「没頭時間」のつくり方(鉄道大好きっ子編)
先生、夕方が本当に地獄です。料理を始めると、すぐ『ねぇ!ねぇ!』が始まります。手が止まるし、私もイライラしちゃって。
お母さんの頭の中では、太郎くんがまとわりついてくることが前提になっていますよね?
…はい。そうです。『来たらどうしよう』って、考えていました。
発想を変えていきましょう。ところで、太郎くんは鉄道が大好きでしたよね?
相変わらずです。一番好きなのは、総武快速線で車両はE217系です。
それ古い車両ですよね?確か、新型は…
(小声で)E235系です
こういうところ、本当にすごいんですけどね…
さすがだなぁ。では、これが具体的な提案なんですけど…。
このような作戦会議の後、いくつかの物品を揃えることから始めました。
親御さんにまず用意していただいたのは──
- 『日本全国鉄道超完全図鑑(永岡書店)』
- 『講談社の動く図鑑MOVE鉄道(講談社)』
- A4トレーシングペーパー
- 色鉛筆
これらを購入してもらいました。
ちなみに準備にかかった費用は、トータル約5000円でした。
夕方、太郎くんが放課後デイから帰ってきたら──
- 手を洗ってルーティンの自立課題をする。
- 終わったら、母から図鑑とトレーシングペーパー1枚を受け取る。
- ペーパーを図鑑のお気に入りの電車に当てて写し描き&色塗り。
- 完成した作品はファイルに入れてコレクション。
- そうこうしているうちに夕飯ができるので、手を洗ってからいただきます。
こんな感じで過ごしてもらうことにしました。
はい、これが私から親御さんに提案した夕方の過ごし方です。
支援者が「無視」より大事にする “まだ目に見えない行動”
目の前で困った行動が起こると、親御さんは当然、それを「やめさせたい」と考えます。
まとわりつく、自傷行為、激しいかんしゃく──
もちろん、こんな行動は、支援者である私だって…嫌です。
大抵の親御さんや支援者は、目に余る行動が起こってから、どうにかしようと手を打とうとします。
ですが、支援を行う上で私たちが持つべき視点は、そこではありません。
私たちが考えるべきは、「まだ目に見えない行動」です。
太郎くんの「図鑑を受け取る」「写し描きをする」「完成作品をファイリングする」といった行動──
これらは、お母さんが「まとわりつくのをやめさせたい」と悩んでいるときには存在しない、
『まだ目に見えない行動』です。
一方、支援者である私にとっては、目の前にその行動がなかったとしても、
鉄道好きの太郎くんなら、こんな風に没頭できるはず…
と頭の中で具体的にイメージを膨らませることができます。
そのイメージを、親御さんと相談しながら、ご家庭で実現可能な形に落とし込んでいくのです。
これこそが、問題行動への支援における基本的な考え方です。
問題行動を“消す”よりも最強!新しい習慣を作る「シェイピング」の視点
まとわりつく行動が起こってから、それをどうにかしよう(無視しよう)とするのではなく、
どうすれば「健康的」「ポジティブ」「没頭」を実現できるか
支援では、この点を強く意識します。
「太郎は昔から“鉄道命”だったよな…」
「母が忙しい夕方の30分、鉄道タイムにしたらどうだろうか…」
「集中したら、お母さんが目に入らなくなるくらい集中するだろうな…」
これらは、問題行動を消去の原理でなんとか消してやろうという発想ではなく、
新たな良い行動・良い習慣を作ってしまおうという視点です。
専門的には「シェイピング」といいます。
行動上の問題への支援では、このシェイピングの視点こそ最強と確信しています。
さらに、私の頭の中ではもう一工夫・一手間を加えます。
それは、大人から──
「すごい!」
「やるじゃん!」
「ありがとう!」
という反応を、自然と引き出すような行動をシェイプするということです。
感心した、心から褒めたい、感謝したいという率直な反応です。
先ほどの太郎くんですが、それは見事なまでに電車を模写します。
電車の絵が溜まったファイルを見て、お父さんが──
これ、すげーな…
と言ってましたから。
かなり自閉症状の重たい子の支援でも同じです。
あるお子さんは、手持ちぶさたな時間になると、壁に物を投げるという行動が増えてきました。
そういえば、小さな溝や隙間があると、爪でカリカリする癖があったな…
ということを思い出し、私が彼と一緒に取り組んだのは──
「エアコンのフィルター」と「お風呂のタイル」のお掃除
です。
歯ブラシ、スポンジ、重曹、ハンディ掃除機など、
道具の使い方を含めて、手取り足取りで教えます。
その結果、お風呂はピカピカ、エアコンも快適、何より本人も親御さんもハッピーです。
一見“謎のこだわり”に見えた行動を活かしたことで、問題行動がなくなっただけではなく、
家族全員から「ありがとう」を引き出したのです。
問題行動は「こじらせる前」に!なるべく早く支援を始めるべき理由
さて、前編と後編を通じて──
- 問題行動を無視して消去してやろうという発想ではなく
- 良い習慣・良い行動をつくる(シェイピング)視点で支援する
この考え方をお伝えしてきました。
「まとわりつく」には芸術・アートを、「物を投げる」にはクリーン活動を。
激しい消去バーストなんか起こさせず、子ども、親、そして私にとって三方良し。
そういう支援をしていきたいです。
そして最後に、もう1つだけ強調したいことがあります。
支援は早期に始めましょう。
私の支援は、お問い合わせ時点で3歳未満のお子さんとそのご家族を対象としています。
太郎くんのように、幼少期から何年もの付き合いになれば、
何が好きか、どういう動きが得意か/不得意かなども把握できます。
自立課題の習慣や、親と離れて1人で過ごす習慣も、
幼少期から支援を開始していれば、当たり前のように身に付きます。
風邪をこじらせるように、問題が少し難しくなったとしても、
早期支援を行っていたお子さんは、リカバリーが圧倒的に容易です。
こちらの過去記事も参考になるので、ぜひ読んでくださいね。




当相談室では、行動分析学に基づいた出張相談を行っています。
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- 対象年齢: ご相談時点で3歳未満のお子さま
- エリア: 千葉県・東京都を中心に出張対応
- 支援方法: 応用行動分析学(ABA)に基づいた支援プランを個別にご提案
- サポート内容: ご家庭での療育支援、親御さんへの具体的アドバイス
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