「全部受け止めてあげれば大丈夫」は本当?ママに執着した2歳児の事例

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「お母さんから離れられない」状態を「大丈夫」と言われた結果

2歳3歳の子どもが、お母さんに執着して離れられない──

このような悩みに、私は早期支援の現場でどのように向き合ってきたのか、
これまで、こんな記事を書いてきました。

📒2歳児がママにべったりで離れないときに。「親から離れる練習」のはじめ方
📒“1人で遊べる子”は伸びる──早期療育で最初に身につける力とは

子どもが親から離れて過ごすのは、大切なスキルですよと強調してきたわけですが──

  • ママが大好きなのだから、べったりでもいいじゃないか…
  • 親から離れて?1人で遊ぶなんてかわいそう…

実際のところ、そのような声も届きます。
そこで今回は、親への執着が激しいことに悩んでいたお母さんの声を紹介します。

お母さんがどのように悩んでいたのか、支援者と一緒にどのように解決したのか──
教育相談の雰囲気が伝わるようにお伝えします。


まるでコアラのようにお母さんにしがみつく──教育相談で見えた親子の姿

療育支援のため、とある家庭に初めて訪問した日のこと──

なんというか…お子さん、コアラみたいですね

そうなんです。どうにか助けてください…💦


リビングにはお母さん、2歳後半の女の子、そして私の3人。
お子さんが、お母さんの足にコアラのようにしがみついた状態のまま離れません。

お母さんによると、家では普段から母の半径50センチ以内にぴったり。
来客があると、お母さんの足やお腹にぴたっとしがみついて離れなくなるとのこと。

私とお母さんが話をしていると、

「だーめ!だーめ!」

と、大人同士の会話を遮ろうとします。

こんな感じなので、お母さんは家事のほとんどを子どもが寝てから行っていました。
以前、学生時代の友人を招いた際も「だーめ!」が発動し、たった30分でお開きに。

これまで、あちこちに相談されたのですね

そうなんです。実は…

こうして、お母さんから過去の相談歴を伺いました。


「全部受け止めてあげれば大丈夫」──発達センターで言われた結果

お母さんは、1歳過ぎから娘さんのかんしゃくが強いことに悩んでいました。
ちょっと離れただけでも大声で泣き出し、思い通りにならないとひっくり返る癖もありました。

自治体の健診を通じて、発達センターに相談。そこで支援員から──

「こんな可愛い子なのに、一緒が辛いなんて、お母さんあんまりですよ」
「わがままも今のうちだから、全部受け止めてあげれば大丈夫です

と言われたそうです。
どこか不安を覚えながらも、まさかこんなべったりがいつまでも続くとは思えないし…

専門家の方がそう言うのなら…


と、一日中母にぴったりくっつく状態を半年続けたところ──

コアラになってしまったと…

そういうことなんです💦

だーめ!だーめなの!!



さて、状況はよく分かりました。

しかし、子どもが足にぴったりくっついている状態では、落ち着いて話なんてできません。

さらに「だーめ!」が発動すると、「もうちょっとだからね」など、
お母さんが即座に反応しますし、何よりイライラしてしまいます。

では、大人同士が落ち着いてお話しできるようになりましょう

まず、このようにお母さんにお伝えしました。


「コアラちゃん」を卒業できた理由──リッチな環境で切り替えの練習

まず私が取り組んだのは、リビングの“模様替え”です。

リビングの一角に、その子が好きなおもちゃをふんだんに集め、ヨギボーのクッションまで用意。
テレビのモニターも見やすいベストポジションです。

家の壁と元々あったベビーゲートとを利用し、漫画喫茶の個別ブースのような形に。
あまりにも贅沢で豪華な場所なので、「ラグジュアリールーム」と命名しました。

次に、お母さんの足にしがみついていたお子さんを、私が安全を確保した上で、一瞬で引き剝がします。
電光石火の如く抱き抱え、数秒もかからずラグジュアリールームにご案内しました。

!?

最初は何が起きたか分からず混乱状態だったコアラちゃんですが、
リビングに突然爆誕したルームの中で、ヨギボーにしがみつきながら1人で遊び始めました。

噓でしょ!?

お母さんが驚くのも無理ありません。

2歳過ぎから半径50センチ以内が当たり前だった親子が、数メートルも離れ、
しかもお母さんと来客が話をしても割り込まないわけですから。

大人が大切なお話をしているとき、コアラちゃんはラグジュアリールームで過ごす。
お話が終わって呼ばれたときは、ルームから出てきて大人と一緒に過ごす。

このシンプルな切り替えの練習を何度も何度も繰り返しました。

また、普段はラグジュアリールームをどのように使うかについても、細かくお伝えしました。
親御さんが在宅のデスクワーカーなので、仕事ができるようになることも目標にしました。

数か月後の相談時にゲートを撤去し、ラグジュアリー「ルーム」から「スペース」に改名。
親から離れて過ごす姿もすっかり板についてきました。

こうして“コアラちゃん”は卒業となりました。


「可愛い」から「わがまま」へ──数年後に起きた“手のひら返し”

さて、後日談があります。
数年後、親子でかつて相談した発達センターに行く機会がありました。

その日、コアラちゃんは機嫌が悪く、久しぶりにかんしゃくを起こしてしまいました。

そんなタイミングで、かつて「わがままも全部受け止めてあげれば大丈夫」
と言った支援員が親子の横を通りかかったそうです。

そしてすれ違う際、「あんなに大きいのに、わがままな子ねぇ」と呟いたそうです。

はぁ!????(怒)

一瞬「どの口が言うか?」と言いそうになりましたが、
お母さんは、私の“ある話”を思い出し、ふと冷静になったそうです。


可愛いには賞味期限がある──支援現場で何度も見てきた現実

“ある話”とはこのようなことです。
実は、このような出来事は決して珍しくなく、よくあることです。

社会の中には、子どもを手放しで「可愛い」と感じる人がいます。
その一方で、「興味がない(むしろうっとおしい)」と感じる人もいます。

私自身、子どもは本来、愛され、そして認められる存在であるべきだと思っています。

しかし、社会の目はシビアで残酷です。

社会の中には、子どもを「可愛い」と感じる人がいる一方で、
「可愛くない」「うっとおしい」と感じる人だって必ず存在します。

支援者であれば、この現実を常に頭に入れておく必要があると思っています。

特に子どもは、年齢を重ね、体も大きくなり、自己主張も強くなってくると、
いわゆる「可愛さ」だけで見てもらえる存在ではなくなります。

先ほどの支援員のような「手のひら返し」も、決して特別なことではありません。

可愛いには、賞味期限があります。

だから私は、2~3歳の子育て支援の第一歩として、
「親と子がきちんと離れる経験」を大切にしています。

人にまとわりつく癖のある子は、最初は可愛いと受け取られていたとしても、次第に──

落ち着かない、うっとおしい、可愛くない

と評価されていく場面が増えていきます。

一方で、早い段階から「離れる練習」をしてきたご家庭のお子さんは──

穏やか、落ち着いている、可愛い

と受け取られることが多くなっていきます。

このような逆説的な光景を、私は現場で何度も見てきました。

これは、支援=人への接近と考えている方にとっては、
なかなか受け入れがたい視点かもしれません。

賞味期限、案外早いですよ。


支援現場のリアル──「もっともらしい言葉」が子育てを苦しめることもある

今回の記事は、親御さんから「ぜひブログにしてほしい」との声をいただき、書いたものです。
親御さんからは、

時に常識を疑うことも大切ですよね

という言葉も預かっています。

確かに、「全部受け止めてあげれば大丈夫」という言葉は、
とてももっともらしく聞こえます。

しかし私は、その言葉によって、かえって子育てが苦しくなっていったご家庭を、
これまで何度も支援してきました。

このブログでは、支援現場のリアルな空気感を、そのままお伝えしたいと考えています。


子どもが暴君、親がしもべ──
そんな緊張感のあるケースも、ここでは紹介しています。

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