療育は「泣くのがかわいそう」との戦いである

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子どもの涙に、親は耐えられない

高い所から飛び降りる?

実は、これなんです……。


親御さんから動画を見せていただくと、そこにはとても危険な様子が映っていました。

2歳後半の男の子が──

  • 高さ1mほどのダイニングテーブルの上に立つ
  • そこで強く3回ほど地団駄を踏む
  • 最後にテーブルから床に大きくジャンプする

この流れがパターンになっており、一日に何回も繰り返されるというのです。

動画を見終えた後、この行動をどうやって止めるか、具体的な手立てを親御さんに伝えました。

簡単に言えば、そもそもテーブルによじ登ることすら不可能にするという方法です。

一通り話を終えたところで、親御さんに意向を確認すると、このように切り出されました。

それ、子ども泣きませんか?

続けて──

泣かせるのは、かわいそうです…。

とおっしゃいました。

さて、今回の記事でお伝えしたいことは、危険な行動への対処方法そのものではありません。

子どもの「泣き」に対して、親がどう向き合ってほしいか。そのことをお伝えしていきます。


療育の現場で立ちはだかる「子どもが泣く」という壁

私は、千葉県・東京都を中心に、ご自宅まで出張して療育を行っています。言葉の遅れや行動上の問題など、依頼のあったご家庭で直接支援を行います。

親御さんに様々な支援策を提案しますが、そのとき、いつも立ちはだかる「壁」があります。

それは──

子どもが「泣くこと」を、
親御さんがどう受け止めるか。

という問題です。

子どもが涙する姿を、親御さんがどう受け止めるか。それが、支援が続くかどうかの大きな分かれ道になります。


「泣く=かわいそう」という誤解

先ほどの例に話を戻します。

食卓テーブルの上でダンダンと飛び跳ね、床に大きくジャンプする──

このような危険な行動を、支援者として止めないわけにはいきません。本人や家族がけがをしますし、いずれ他の場所で、似たようなことをするようになるかもしれません。

でも、「危ないから」「将来的によくないから」ということくらい、親御さんだって重々分かっています。

それでも、親御さんが改善の一歩を踏み出せない理由は──

涙=子どもを苦しめている
涙=かわいそうなことが起きている
涙=親がなだめなければならない

この「誤解」が、親御さんに強く刷り込まれているからだと考えます。


「泣きますよ?」と伝えてから支援を始める理由

支援者として親御さんに語りかけるとき、技術や方法の話だけでは、実は不十分です。

「涙=かわいそう」

この誤解を解くことが大切です。

たとえば、「そもそもテーブルに登ることすらできない」というセッティングをした場合、多かれ少なかれ、子どもの目から涙がこぼれます。

食卓テーブルが、トランポリンやジャングルジムのような“遊具”になっていたわけです。
その“遊具”がなくなれば、怒りだすのも無理はありません。

でも、安全面・行動面を考えれば、たとえ親御さんがかわいそうと思ったとしても、支援者として、ここは絶対に譲れません。

泣きますよ?いいですか?

と、親御さんに伝えて作戦を実行します。

これは、親御さんの同意を得るためでもあります。同時に、「同じようにやってくれますか?」という確認でもあります。

セッション中に納得・同意できなかったことを、親御さんがホームワークでやってくれるはずがありません。

たとえ、それが心の底からの納得ではなかったとしても、です。

だからこそ、支援者である私が全責任を負って、「涙=かわいそう」の誤解を、現場で解かなければなりません。

つまり──

  • ほら、大丈夫だったでしょ。
  • できるようになりました。
  • これを続ければ良さそうですね。

これを、腹の底から納得してもらうということです。


赤ちゃんのころは正解だった対応が、幼児期には通用しなくなる

ところが、このような考えを親御さんがスッと受け入れてくれることは、まずありません。

泣きへの対応が難しい理由は、乳児期には正解だったことが、ある時期から不正解になっていくからです。

赤ちゃんのころは、泣いていればあやしてあげればよいですし、おむつを替えたり、ミルクをあげたりすればよいわけです。

この時期に「泣いたらなだめるのは親の務め」が刷り込まれていきます。

もちろん、この対応は本来期限付きのものです。
幼児期に入ってからも、いつまでも続けるものではありません。

でも、いざ我が子が2歳、3歳になったとき、具体的にどうすればいいか、ほとんどの親御さんは分かりません。

実際、私の相談を受けた親御さんも──

息子がどうして泣いてるかを考え、泣き止ませるためにあれやこれやと四苦八苦していました。

と、当時を振り返っています。

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泣きへの対応は、早く始めるほど変えやすい

そうであるからこそ、支援は早いに越したことはありません。

低年齢であればあるほど、泣きからの卒業はしやすくなります。そして、良い行動も身につきやすくなります。

良い行動の中には「言葉」も含まれます。

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また、支援が遅くなるほど難しくなるのは、子どもの行動だけではありません。
親御さんに支援者の言葉が届きにくくなる、という問題もあります。

人間は、他人からのアドバイスを簡単に受け入れるものではありません。

たとえうまくいっていなかったとしても、親御さんには親御さんなりの、子育てに奮闘してきた歴史があります。

そんなときに私が外からやってきて、たとえ正論を伝えたとしても、親御さんからすれば──

これまでのやり方が間違っていたのか……

と傷つきます。あるいは、

子育てを否定された……

と感じる方だっています。

同じ言葉で、同じ支援内容を伝えたとしても、子育ての年数が増えれば増えるほど、支援者の言葉は届きにくくなっていきます。


療育は「泣くのがかわいそう」との戦いである

子どもが泣くことを、親御さんがつらく感じるのは当然です。

しかし、子どもが泣くたびに大人が付き従うことは、子どものためにはなりません。

  • 泣けば要求が通る。
  • 泣けば危険な行動も続けられる。
  • 泣けば大人が動いてくれる。

この形が続いてしまうと、子どもは泣く以外の方法を身につける機会を失っていきます。

療育で大切なのは、泣きに代わる、もっと穏やかで、これからの生活につながる行動を教えることです。

具体的な方法としては、こちらの記事が参考になります。

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「泣くのがかわいそう」で止まっている限り、子どもの行動は変わりません。

泣きに代わる行動を作ること。
それが、療育で本当に向き合うべき課題なのです。

療育支援は、「泣くのがかわいそう」との戦いなのです。


当相談室では、言葉の遅れや行動上の問題など、療育に関するお悩みを家庭に出張して支援します。

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