発達の遅れや自閉スペクトラムのある子と園行事──保護者と先生が悩む場面
私は、個人のお宅に出張して療育を行うほか、いくつかの幼稚園・保育園での支援(コンサルテーション)にも携わっています。
この記事では、園で行われる運動会や音楽会などの「行事」についてお話しします。
もちろん『行事』を、子どもの成長を見ることができる機会として、楽しみにしている方は多いでしょう。
その一方、我が子に発達の遅れや自閉スペクトラムの特性がある場合、その保護者の胸中はとても複雑です。
複雑どころか、行事を辛い気持ちで迎える方もたくさんいます。
実を言えば、幼稚園・保育園の先生たちも、行事に対して大きな不安を抱えていることが少なくありません。
たとえば、ある先生が、自分のクラスで発語のないお子さんを受け持っているとします。
今度行われるお遊戯会で、園児全員で歌をうたうとなったとき、先生は大いに悩むわけです。
- 歌やセリフの場面は一体どうすればいいの?
- ただそこに立っているだけになってしまう?
- そもそも舞台に立つことすら難しいのでは?
このように、先生たちは「一体何から始めて、どうサポートすればいいのか?」と、頭を悩ませているわけです。
発表会や運動会で困る理由──多くは「普段の保育」にヒントがある
このような先生の悩みに答え、具体的な手立てを提案することが私の仕事です。
その際、一番大切にしているのは──
行事は、決して「特別な日」ではありません。
ということです。
たとえば、発表会の舞台では、衣装を着ることがあります。ところが、ある子どもがそれを嫌がってかんしゃくを起こす、着せても暴れて脱いでしまう、といったことがよくあります。
こんなとき先生は──



本番で衣装着てくれるかな…
と心配になるかもしれません。でもこれ、本当に衣装の問題なのでしょうか?
では、お遊戯会のはるか前、もっと「普段」の場面を振り返ってみましょう。
たとえば、そのお子さんが日頃から、制服を着る・体操服に着替えるといった場面で、強い拒否が現れているとします。
普段からそのような様子であったのであれば、お遊戯会の場面でそうなったとしても、その子にとっては、いつも通りの“平常運転”です。
別の行事でも同じことが起きます。運動会では、自分のクラスの出番になると入退場門に移動する場面があります。
先生が移動を促すために声をかけると、大きな声でそれを拒否する子がいます。
それでは、普段の保育では移動や切り替えがスムーズなのに、運動会に限ってそうなってしまうのでしょうか。
もちろんそういう子もいるかもしれませんが、多くの場合はそうではないはずです。
行事の成功は、普段の保育の積み重ねで決まる
つまり、「普段」が大切ということです。
特別に見える行事も、実は日常の保育の延長線にあります。
たとえば、普段の保育の中で──



滑り台の順番抜かしをする子にどうやって指導すれば良いですか?
と、質問を受けることがあります。
もちろん私は喜んで支援策を考えるのですが、詳しく話を伺うと…



順番抜かしをするとみんなから嫌われてしまうし、集団生活がどんどん難しくなりますよね
と仰るわけです。
一見些細に見えることですが、後の保育、そして行事の場面でも大きく影響していきます。
このような視点で普段から保育をしている先生は、行事が近づいてきても、決してあたふたしません。
今の課題が、これから起こる問題と地続きであることを、最初から分かっているからです。
発達の遅れが重い子の園行事参加──先生と一緒に工夫を考える
さて、私が支援しているお子さんの中には、療育手帳の判定が重度の子や、自閉症の特性が強い子もいます。
こうしたお子さんの場合、行事への参加について「もうひと工夫」が必要な場合が、もちろんあります。
知的な遅れが重く、おしゃべりができないお子さんを受け持っている先生から──



合唱の場面、どうしましょう?
と、現場で相談を受けることがあります。こういうときこそ、先生たちと一緒に知恵を出し合います。
- 歌はうたえないかもしれない…
- でも音楽を楽しむことはできる
- 何か楽器を持たせてみる?
- 曲に合わせた活動って他に何かないかな?
こんなことを、とにかく考え抜きます。
実際の例を1つ紹介します。
行事への参加は「同じことをする」ではない──「その子らしい参加」とは?
年度末の発表会で、「思い出のアルバム」という曲を歌うクラスがありました。
そのクラスのあるお子さんは──
- 知的な遅れが重く、歌詞の意味は分からない
- 長い時間立った姿勢で過ごすことが難しい
- 独特な雰囲気で大声が出てしまうかもしれない
こうした点が、話し合いの中で課題として挙がりました。
その子がどう参加するのが一番良いか考え抜いた結果──
を担当してもらうことになりました。
みんなが歌をうたっている間、その子は先生と一緒に舞台に立ちます。
あるタイミングでその場から少し歩いて移動します。
遠足や運動会、お泊り保育など、クラスの思い出の品や絵を舞台上で掲げて紹介します。
そんな参加のあり方です。
参加は、「みんなと同じようにする」ということではありません。
「障害のある子にはこうするべき」といった杓子定規でもありません。
その子らしい参加を考えましょう
これが合言葉でした。
どんな子どもでも、行事から排除されてはいけない
10年以上支援をしてきた中で、悲しい現実に出会うことが何度もありました。
- 「障害のある子は見学にした方が良い」
- 「他の子に迷惑がかかる」
- 「子どもに『恥』をかかせて、かわいそう」
このような言い分で、あるお子さんを不参加にしようとする場面を何度も見てきました。
厳しい言葉で言えば、それは「排除」です。
しかし、私にとっては、障害の有無や重い軽いなどは関係ありません。
どんなお子さんでも絶対に「参加」させるという信念があります。
隠すとか排除するなんて考えは全くありません。
でも信念だけでは不十分です。まとめになりますが──
- まずは普段の保育を大切にすること
- その子らしい参加の形を考えること
これが、行事への参加を考えるうえで大切な視点だと思っています。
幼稚園でのコンサルテーションについては、こちらの記事でも紹介しています。




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