今回の記事は、特に幼稚園や保育園、あるいは学校の先生方には、
「そうそう、まさにこういう子…」
と、思い当たる節があるかもしれません。
けれど一方で、保護者の方の中には、
読むだけで胸がざわつき、強い拒否反応を示す方もいるでしょう。
支援の現場で大勢のお子さんを支援してきた中で、
特に集団での適応が難しくなるお子さんには共通点があります。
その中の1つが──
拒否のクセ。
これです。
幼少期から“拒否のクセ”が日常になってしまったお子さんは、
その後、社会の中でつまずく確率が圧倒的に高いのです。
今回お伝えしたいのは、その「拒否のクセ」が
いかに子どもの発達と社会適応に影響するかということ。
そして、もし今その兆しがあるなら、どうやって軌道修正していけるのか──
その視点を、少しでもお届けできたらと思っています。
困りごとはバラバラに見えて、根っこは同じ──“拒否”が支配する日常
私は、ご家庭だけでなく、いくつかの幼稚園や保育園での支援にも関わっています。
そこでは、かんしゃく・食事の拒否・他害・教室からの飛び出しなど、さまざまなご相談を受けます。
一見すると、これらの困りごとはすべて別々に見えますよね。
けれど、実際に子どもとのやりとりを観察していると、共通するパターンが浮かび上がることがあります。
たとえば、先生と園児のこんなやりとりの場面です:

手を洗って、帽子をしまいましょう
ヤダ!ヤダ!



お味噌汁、飲んでみようか
嫌い!



粘土をやるので、椅子に座ろうね
粘土やりたくない!ぬりえがいい!(と先生を突き飛ばす)
このように見てみると、かんしゃくや偏食、さらには場面からの逃避や他害も、
何かにつけて「拒否」から始まっていることに気づきます。
何か声をかけるたびに「ヤダ」「イヤ」「嫌い」など、
大人の指示そのものを“自動的に拒否するクセ”が身についてしまっている。
これは、決して少なくないケースです。
拒否のクセは、あらゆる困りごとの“種”になる
ここで言う「拒否のクセ」とは、
大人の声かけや指示に対して、なかば反射的に“イヤ”“ヤダ”と返す習慣のことです。
たとえば──
- 「集まりましょう」に「ヤダ」
- 「片づけてね」に「イヤ」
- 「順番を守ろう」に「やらない!」
これは、大嫌いなピーマンを無理やり食べさせられそうになって「イヤだ」と言う、
いわば自然な“意思表示”とは違います。
問題なのは、日常のごく些細な場面で、見境なく“拒否”が繰り返されていること。
この状態が続くと、発達・行動・社会性のすべてに、さまざまな困難が生じます。
「イヤだ!」という言葉は、実はとても“強力”です。
- 大人の注目をすぐに引ける
- 新しい物や選択肢を引き出せる
- 嫌なことを回避できる
……つまり、「イヤ」と言うだけで、さまざまな“結果”を得られるのです。
それはまるで、トランプゲームの「大富豪」におけるジョーカーのようなもの。
使えば、たいていの場面で勝てる最強カードです。
だからこそ──
もし言葉の発達や行動面で課題のある子が、このカードを手にしてしまったら?
それが唯一の“使える言葉”として強化されてしまったら?
その子は、よほどのことがない限り、そのカードを手放そうとはしません。
「拒否」は、シンプルで汎用性が高く、一度覚えたらやめづらい──
いわば“ひと粒で何度もおいしい”行動なのです。
拒否を軽く見てはいけない理由
見境なく「イヤ!」「ヤダ!」を連発するなんて、
親も先生も、誰も気持ちよくありません。
周りのお友だちだって、本当は快く思っていませんし、我慢しています。
だからこそ、幼児期のうちに、この“拒否のクセ”は無力化しておいた方がいい。
その方が、親も子も、もっと楽になります。
…しかし、そう簡単にはいかないのが現実です。
最大の壁は──
この拒否グセを「発達・行動面の大きな課題」として、きちんと認識できる大人が少ないこと。
目の前で子どもが拒否して爆発していても、
- 「まぁ個性でしょ…」
- 「元気があっていいじゃない…」
- 「まだ小さいんだから…」
…そんな言葉で、問題を“なかったこと”にしてしまう。
けれど、こう問いかけてみたいのです。
もし、クラス全員がその子と同じように“イヤイヤ”を連発したら──どうなりますか?
当然、集団は機能しません。
そうして、子どもの爆発を恐れて“機嫌を損ねないように”大人が先回りし始める。
怒らせないように言い方を変え、空気を読む。
それを「かんしゃくを予防できた」と言う人もいます。
でも、実態は大人が子どもにおもねっているだけです。
むしろ、子どもが大人を操作する経験を積んでいるにすぎません。
そしてこの関係は、年齢とともに、どんどん悪化していきます。
幼児期には“ちょっと大変な子”だったのが、小学校に入る頃には──
- 授業に参加せず後ろで寝転ぶ
- 周囲を混乱させる言動を繰り返す
- 些細なことで暴れる
…そんな困難が表面化してきます。
これは、決してレアなケースではありません。
最初は「可愛い」などと言って高を括っていた“イヤイヤ”が、誰にも止められなくなるのです。
拒否のクセはどう修正できるのか?
さて──
ここまで読んで、「じゃあ、この拒否のクセってどうすればいいの?」と思った方も多いでしょう。
結論から言えば、最も大切なのは、幼少期に支援を始めることです。
それも“なるべく早く”。
なぜなら、クセが定着する前であればあるほど、
良い習慣を積み重ねやすく、予後が圧倒的に良くなるからです。
とはいえ、早期に始めるだけで全てが解決するわけではありません。
支援が効果を持つには、
親御さんがまず「拒否のクセ」が社会生活において大きな壁になることを、
本当に理解していることが前提になります。
そのうえで、具体的に何を変える必要があるのかを、
日常の中に丁寧に落とし込んでいきます。
たとえば──
- 親が呼んだら100%反応する習慣をつける
- シンプルな指示にためらわず従う経験を重ねる
- 大人主導のペースで一緒に手をつないで歩く練習をする
こうした練習は、支援者の指導の下、ご家庭でゲームのように楽しく行うこともできます。
家庭内での日々の声かけや対応を工夫することで、良い経験をいくらでも積むことが可能です。
📌 参考記事:
👉 「名前を呼んでも振り向かない」2歳・3歳──反応しないのは“性格”ではありません
👉 3歳児が外で急に走る──道路や駐車場での“飛び出し”を防ぐ練習と考え方
逆に、これらの取り組みを一切しないまま、拒否のクセが強い状態で幼稚園に入園すると──
その後の見通しは、かなり厳しくなります。
入園後、たまたま熱心で技術のある先生に当たり、
粘り強く指導してもらえるケースもゼロではありません。
でも、その確率は…
正直、宝くじに当たるくらいのものだと思っておいた方がいいです。
しかも、そのような先生に出会えたとしても、
親側の関わり方が変わらなければ、高い効果は期待できません。
幼稚園だけに頼るのではなく、家庭での関わりもセットで見直していく必要があります。
最後に──たった1人に届けば、それでいい
今回の記事は、おそらく“受け”は良くありません。
(もともと、受けの良いことを書こうとも思っていませんが)
「何を大げさな」と思う親御さんもいるでしょう。
「子どもの拒否くらい受け止めてあげるべきだ」と考える支援者の方も、きっといるはずです。
私の文章は、100人いたら99人の方には届かないものだと自覚しています。
でも、だからこそ──
残りの1人に「確かに、そうかもしれない」と思っていただけたなら、それで十分です。
実際、相談の問い合わせをいただくのはそういった方からですし、
ふとした出会いから、支援の輪が広がることもあります。
これからも、
きれいごとではない、現場のリアルを伝える記事を、書き続けていきたいと思います。
過去にこんな記事も書きました。
もちろん、今回の内容とも深く関係しています。




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