言葉の遅れに悩む親御さんへ──療育の現場で最重要とされる「動作模倣」とは

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もうすぐ2歳なのに言葉が出ない──発達相談の現場でいちばん多いテーマとは

子どもが2歳になるのに、言葉が出ません……

私は千葉県・東京都を中心に、10年以上出張で療育支援を行っていますが、ほぼすべての相談は「言葉」から始まります。

  • 「発語がない」
  • 「おしゃべりができない」
  • 「呼びかけても反応がない」

言葉やコミュニケーションに関する悩みは、発達相談の現場では必ずと言っていいほど出会うテーマです。それくらい、親御さんにとって切実な問題です。

これまでこのブログでも、言葉やコミュニケーションに関する記事を書いてきました。

👉言葉が遅れている子に『ちょうだいサイン』を教えてはいけない理由
👉「クレーンはそのうち減ります」は本当ですか?──現場が見てきた、様子見の代償

これらの記事では、療育の現場でよく見かける「よくない関わり方」についてお伝えしました。

どちらも、子どもが要求を伝える行動ではあります。しかし、その関わり方が習慣になると、

  • 子どもが人を見なくなる
  • 身体接触による要求が強くなる

といった問題が起こります。

言葉の発達にブレーキがかかるだけではなく、周りの人が痛みを我慢する関係が続いてしまうこともあります。

では、どうすればいいのでしょうか。

言葉が遅れている子どもにとって、本当に大切な練習は何なのか──

今回の記事では、療育の現場で私が特に重視している

「動作模倣」

について、お伝えしていきます。


言葉の獲得に模倣が欠かせない理由──「見て真似る」が発達の土台になる

言葉の遅れに悩む親御さんに対して、最初にお伝えすることがあります。それは──

言葉は「盗んで」覚えるものです。

盗む?


つまり、言葉を覚えて使えるようになるためには、誰かが使っている言葉を真似するというステップが必要ということです。

そして、当たり前ですが、真似をするためには、相手を「見る」ことが欠かせません。

相手を見なければ、言葉も動きも盗むことはできません。


もし、必要な場面で相手を見るという行動が育っていなければどうなるでしょうか。

大きな声を出したり泣いたりなど、乳児期から使ってきた習慣を使い続ける

ことになります。

これらの行動は、相手を見なくても成立してしまうからです。

そうなると、いつまでたっても言葉を「盗む」機会が生まれません。

だからこそ、生活の中で

相手の動作を見て、見よう見まねで真似してみる

そんな練習や習慣を取り入れていくことが大切になります。

動作模倣は、療育の中でも最も重要な練習のひとつです。

こう言い切っても、決して大げさではありません。


動作模倣の基本とは──大きな動作を「言葉の代わり」として使うところから始める

模倣と言っても、いきなり細かい動きや早い動きを真似させることは難しいです。そのため──

  • 大きく腕を上げてバンザイ
  • 両手でお腹を触る
  • 手を握ってグーにする

など、なるべく大きい動き、分かりやすい動きから始めます。

そして──

「バンザイ」や「お腹」の動作を『言葉』として使います。

どういうことですか?


たとえば、レゴブロックの箱があります。
しかし、フタが固くて子どもの手では開けられません。

そんなとき、お母さんが無言でバンザイする。
子どももそれを見てバンザイする。

すると、お母さんが褒めながらフタを開けてくれる──

そんなイメージです。

  • ジュースを注ぐとき
  • DVDを再生するとき
  • 棚の上におもちゃをとってあげるとき

こうした日常の場面で、「親を見て真似する」ことを、当たり前にしていきます。

細かすぎる動きでは子どもも嫌になりますし、
『言葉』は使えなければ意味がありません。

お父さんやお母さんの動きをしっかり見る。
最初はへたっぴでもいいから真似をしてみる。

1つ覚えれば便利なちょうだいサインでもなく、
腕が痛くなるクレーンでもなく、

大きな動作模倣を、ランダムに行う

こうした関わりを続けていくと、子どもは「人を見る」ことが自然になります。


動作模倣を始めると子どもが荒れる理由──消去バーストとよくあるつまずき

動作模倣をやってみましょう──

ここまで読んで、「意外とシンプルで、すぐに始められそう」と感じた方もいるかもしれません。

しかし、この記事を読んだだけで、すぐにうまくいくほど簡単なものではありません。

子どもには、これまで生活の中で身につけてきたパターンがあります。

  • かんしゃく
  • 便利なちょうだいサイン
  • クレーン

これらは、子どもにとってとても便利な方法です。
親を見て真似をするよりも、こちらの方が手っ取り早くて楽だからです。

そのため、動作模倣を始めようとすると、子どもが一時的に大荒れになることがあります。

過去記事でも紹介した、消去バーストと呼ばれる現象です。

親御さんにとっては、せっかく動作模倣にチャレンジしたのに、激しいかんしゃくで出鼻をくじかれたように感じるかもしれません。

すると──

うちの子には合っていないのでは……

と、思われるかもしれません。

他にも──

  • 子どもが一向に動き出さない
  • 動きは真似するけど、親の方は見ていない
  • 便利なサインが「バンザイ」に変わっただけ

このように、動作模倣にはつまずきやすいポイントがいくつもあります。


消去バーストとは?
こちらの記事で詳しく紹介しています。

👉「問題行動は無視してください」なんて無理です──子育てを困難にする“教科書支援”の落とし穴


動作模倣は「読んだだけでできる」ものではない──専門的な支援が必要な理由

このように、一見簡単に思われそうな動作模倣ですが、実は奥が深い取り組みです。

動き出さない子には、どうやってお手伝い(プロンプト)をすればよいのか。

大きな動きから始めると言いましたが、どのタイミングで細かい動きへとステップアップしていくのか。

こうした判断は、教科書やマニュアルだけで決められるものではありません。

お子さんの様子や、ご家庭の関わり方を実際に見ながら調整していく必要があります。

特に、お子さんが一番長い時間を過ごす場所は自宅です。

その場所をどのような環境にするのか。
どのタイミングで、どんな練習を取り入れていくのか。

こうした判断は、やはり専門的な視点が必要になります。

私が10年以上、家庭への出張支援を続けてきた理由も、まさにそこにあります。


動作模倣が育つと発達年齢が上がる──子どもが”勝手に学ぶ”ようになる理由

今回の記事では、「動作模倣」をテーマにお伝えしました。

動作模倣がしっかりできるようになると、言葉だけではなく、生活の中で必要な動きも覚えられるようになります。

  • お手本となる大人をよく見る
  • それを真似できるようになる

この流れが自然にできるようになると、親が何かを教えようとしなくても、子どもは生活の中でさまざまなことを覚えていきます。

いわば、「勝手に学ぶ力」が育つということです。

これは決して誇張ではなく、発達年齢がぐんと上がることにつながります。

だからこそ──

動作模倣は、療育の中でも「最重要課題」の一つなのです。


親御さんの大きな悩みである「言葉の遅れ」──
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