偏食・少食・食べ歩き…子どもの食の悩み、どう向き合う?

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食事の支援には、大原則があります

教育相談の中では、食事に関する相談も多く受けます。

親御さんから相談を受けるとき、

「偏食、少食、食べ歩き…」

など、悩みの形は様々です。

しかし、どのような形であったとしても、食事については大切な原則があります。それは…

人間は、生きている限り、必ず何かを食べている」

そしてもう一つ、

「食べなければ死んでしまう」

ということです。死んでしまうなんて物騒な言い方ですが、これは揺るがない事実です。


戦時中の食生活に、偏食はあったか?

ちょっと昔話をします。

私は小さい頃、祖母から戦時中の話をよく聞かされました。祖母は昭和10年代の生まれ。一番食べ盛りの時期に、ひどい食糧難を経験しています。

どんな食生活だったかというと、食べるものといえば毎日お芋ばかり。白いご飯なんてめったに食べられず、卵が食べられるのは病気のときだけだったそうです。本当にひもじい暮らしです。

では、考えてみましょう。こんな生活を送っている子どもたちに、少食、偏食、食べ歩きといった問題が起こるでしょうか?


本当にお腹がすいていれば、食べる

絶対に起きないはずです。理由は簡単。

お腹がすいていて、食べないと死んでしまうからです。

もちろん、戦時中と同じ生活をしましょうと言っているわけではありません。しかし、

「食事の問題など起こり得ない環境」

を作ることは、今の時代でも十分に可能です。これを教育相談では提案・指導していきます。


まずは実態調査が大切です

実際の教育相談では、お子さんのリアルな食生活を徹底的に調査します。

  • お子さんが何を食べているか
  • どれくらい食べているか
  • どこで、誰と、何時に食べているか
  • 間食も何をどれくらい食べているか
  • 平日と休日では、食生活がどう違うか

食事の様子は動画、メニューは写真で記録してもらい、生活の実態を明らかにします。

そのうえで、具体的なメニュー・量・出し方・対応パターンなど、ご家庭の実態に即したアドバイスをします。具体的な方法や伝え方はケースバイケースですが、一番大切なことはどのご家庭でも同じです。

本当にお腹がすいていますか?

これが、食事支援の核心です。最初こそ、「お腹が空いているのに食べないです」と言っていた親御さんも、実態調査が進むにつれて、

「そういわれると、実は…」

と、「思い当たる節」がいくつも出てきます。


食事を見た目から変えてしまう!

少食、偏食、食べ歩きなど、食行動の問題を解決するカギは、

「お腹がすいた」「もっと食べたい」

という当たり前の欲求を引き出すこと。そのための環境づくりを行うのが、支援者の役目です。

ポイントは、これまでの食事を、見た目からガラリと変えてしまうことです。

量や出し方を根本から見直します。たとえ無発語のお子さんであったとしても、

「何これ?」「今までと全然違うけど?」

と目を丸くするような出し方、メニュー、量に変えていきます。この調整が、まさに専門家の腕の見せどころです。


親御さんの戸惑い、支援者の覚悟

ただ、ここで一番難しいのは、親御さんの想いです。

すべての親御さんには、「我が子にはいっぱい食べて、元気に育ってほしい」という強い願いがあります。ですから、我が子に合わせて「良かれ」と思ってきた食習慣を変えることに、強く戸惑います。

実はここが支援の最大の山場です。

そんな親御さんに“ちょっとしたアドバイス”をしても、支援はうまくいきません。

  • 「必ずしっかり食べるお子さんになります」
  • 「うまくいかなかったら、私の責任です。ここは信じていただき、頑張ってみませんか?」
  • 「まずはたった3日、期間限定と思ってやってみましょう。きっと変化が出ますよ」

こんなふうに、支援者にも思い切りと覚悟が求められます。でも、ここさえ突破できれば、支援は必ずうまくいきます。


食事の支援は、親御さんの成長支援でもある

このような“山場”を乗り越えたあと、親御さんの表情は驚くほど変わります。自信に満ち、凛とした姿になります。

支援とは、子どもの食事の問題を直すことだけではありません。
親御さん自身にとっても、大切な成長の機会となるのです。


当相談室では、言葉だけではなく、食事に関する支援も行っています。ホームページをぜひご覧ください。
👉 こども療育相談室ぷろんぷと ホームページ

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