言葉は出ている。でも会話にならない
子どもの発達相談では、「言葉」に関する悩みがとても多くあります。
その中で、親御さんが戸惑われるのが──
言葉は出ているのに、会話にならないんです……。
というケースです。
たとえば、乗り物が大好きで、図鑑や車のカタログがお友だちのような2歳半の男の子。
これ、きゅうきゅうしゃ!ぱとかー!すーぱーあんびゅらんす!
と、教えたわけでもないのに、難しい単語まで次々に出てきます。
これだけ聞けば、
「言葉はちゃんと出ている」
「むしろ、よく知っていてすごい」
と思うかもしれません。
でも、お母さんが、
ほら、ブーブーだよ!
と声をかけても、
- こちらを見ない
- 返事もしない
- 一人で好きな車の名前を言い続けている
言葉はたくさん出ているのに、
やりとりになっていない。
という状態です。
このような場合、私の出張療育ではどのように親御さんにアドバイスしているか、お話ししていきます。
言葉が出ているかどうかよりも、大切なことがある
それでは、目の前に「2人のお子さん」がいると想像してください。
1人目は、先ほど登場した子です。
自分の好きな単語をどんどん覚えていきます。難しい単語までスラスラと言える姿は、まるで「小さな博士くん」のようです。
けれど、それが実際のコミュニケーションではうまく使われていない。お母さんが声をかけても、反応するかどうかは気分次第です。
一方、もう1人のお子さんは、ほぼ無発語の状態。口から出る単語は「ママ」「マンマ」くらいです。
でも、お母さんが呼びかけると、すぐに振り向いてニコニコするし、「ピーポー走っているよ」と指させば、同じようにそちらを見て指さします。
さて、博士くんとこの子では、コミュニケーションが上手と言えるのはどちらでしょうか?
私は迷わず──
言葉がほとんど出ていない、この子です。
と、親御さんにお伝えします。
コミュニケーションの土台は「すぐに反応する」こと
言葉が多く出ていることと、やりとりが上手なことは、全くの別問題です。
私の療育で言葉やコミュニケーションの練習を行う際、最初に優先して取り組むのは──
親が声をかけたら、すぐに反応する
という行動です。
なぜなら、単語の数が増えていくことよりも、この行動を身に付けることの方が、人とやりとりする上でよっぽど“肝心”だからです。
- 親が呼びかければ、百発百中で振り向く
- 遠くで名前を呼ばれても、ピクッと反応する
- 大人が何かを見ていると、自分もそっちを見る
これらが身に付いていれば、極端な話、言葉が全く出ていなかったとしても、どさくさ紛れかもしれませんが、集団の中でやっていくことができます。
単語が出ているかどうかよりも、こちらの方が、「やりとり・コミュニケーション」の観点で見れば優先度の高い基礎スキルです。
なにより、せっかくお母さんが声をかけてくれたのですから──
すぐに反応してくれなかったら、寂しいじゃないですか。
確かに、反応してくれる方が嬉しいです。


「名前を呼んでも振り向かない」「声をかけても反応しない」といった場合の具体的な練習方法については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
「言葉が出ているから大丈夫」で様子を見ない
今回のお話をまとめると──
単語(言葉)は出ているのに、コミュニケーションの基礎は十分獲得されていない。
そういうケースが多くあることをお伝えしたかったということです。
実際、言葉は出ているわけですから、親御さんからすれば、
ちょっと不思議な子?
に見えるだけかもしれません。
「言葉が出てるだけ良い」と思われることも多く、問題視されにくいのです。
ところが、年齢が上がってくると「語彙は増えているのに、会話が成立しない」という状況が、だんだん明らかになってきます。
幼稚園でお友達や先生とやりとりする機会が増えるほど、



なんだか会話が通じない……
という課題が、よりはっきりしてくるのです。
「語彙は豊富なのに、やりとりがどこか未熟」という相談は、私自身幼稚園の先生から毎年受けています。
大切なことは、やはり早期の支援です。
なぜなら、このようなお子さんには──
- 支援が必要な子であると、気づきにくい
- そのため、支援が遅れる
- 違和感があっても「様子見」の方向に転がる
という問題が根底にあるからです。
「言葉が出ているから大丈夫」と判断しない
今回は、そのことをぜひ知っていただきたいと思います。
当相談室の出張療育がどのように始まるのか、漫画で紹介しています。
冒頭の11ページはこちらから読むことができます。


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