自傷行動があるお子さんに、早期支援で大切にしていること
12月13日、「こども家族早期発達支援学会」にて研究発表してきました。貴重な機会をいただいた学会スタッフの皆様、ありがとうございました。
さて、今回──
というタイトルで発表しました。
2歳10か月という早い段階から、ご家庭にお伺いして支援を始めた事例です。
学会発表のタイトルは少し難しく聞こえますが、要約するとこういうことです。
- 知的発達に遅れがある
- 自分の顔や体を叩いたり、引っかいたりしてしまう
- そんなお子さんが「一人で楽しく遊べる」ようになるための支援
そういう発表です。
今回のブログでは、こうしたお子さんやご家族に出会ったとき、支援者である私がどんなことを大切に考えているか、できるだけ分かりやすくお伝えしたいと思います。
※発表の資料や抄録(発表内容をまとめたもの)をアップすることはできないので、事例そのものには触れない形で紹介していきます。
激しい行動に悩むご家庭で、まず優先すべきこと
お子さんに重い知的発達の遅れがあり、さらに自分を叩くなどの激しい行動が頻繁にある……。
そんな毎日を過ごしている親御さんは、一息つく暇もありません。まさに「生きた心地がしない」という表現が当てはまるほど、心身ともに削られるような日々を送られています。
あるお母さんは当時のことをこう振り返ってくれました。
当時は息子がどうして泣いているかを考え、泣き止ませるためにあれやこれやと四苦八苦していました。
📒早期発達支援のあるべき姿──2歳3か月で相談されたお母さんの声
暴れる我が子を必死に抑え、疲れ果ててしまう。そんな状況にいるご家庭にとって、一番大切なことはたった一つです。
それは──
一刻も早く、専門的な支援を始めること
これに尽きます。
激しい自傷などの困りごとは、できるだけ早く適切な手立てを打つことで、生活を劇的に改善することができます。
「様子を見ましょう」ではなく、早ければ早いほど、お子さんも親御さんもラクになれるのです。
ただし、ここで一つ注意点があります。決して「どこの支援機関でも良い」というわけではありません。
保護者が勇気を出して家庭の切実な現状を話したとき、「まず、何から始めればいいか」を、具体的かつ分かりやすく示してくれる支援者に出会えるかどうか。
これが、お子さんとご家族の未来を左右する、大きな分岐点になります。
自傷が「減った」だけで満足しない理由 ──「ゼロ」を目指す本当の意味
自傷行動への支援を始める際、私が親御さんと必ず共有することがあります。
その1つ目は──
自傷『ゼロ』を目指しましょう
という目標です。
例えば、1日に100回叩いていた子が、10回に減ったとします。数字で見れば、90%減の大成功に思えるかもしれません。
しかし、ここで「よかったですね」とは言いません。なぜなら、まだ10回も自分を傷つけている事実に変わりはないからです。
自傷行動は「減った」では不十分。「ゼロ」になって初めて、お子さんの本当の安心が守られます。
そこで大切になるのが、感覚ではなく「数字(データ)」で確認することです。 親御さんが「すごく減りました!」と感じていても、実は「100が10になった」という状態かもしれません。
ゼロかどうか確認するためには、何かしらの形で記録を取り、データにする必要があります。今回の学会発表の抄録でも、日々の行動をグラフの形でデータ化しています。
グラフを作る理由は、学会発表に箔をつけるためではありません。
ゼロが続いていましたが、この日は増えていますね?
実は、この日は…
このように、実際の教育相談でも、グラフで確認しながら支援の進捗を確認します。
「自傷ゼロ」の目標は、家族の穏やかな生活を取り戻すための、一番最初のスタートラインです。
「静かにさせる」のがゴールじゃない。目指すのは「一人で楽しく過ごせる力」
自傷ゼロとセットで、もう1つ大切にしている目標があります。 それは──
お子さんも親御さんも、穏やかで健康的に過ごせること
これです。では、ちょっと想像してみてください。
もし、激しく暴れていたお子さんが、一日中ぼーっと座っていたり、寝てばかりになったとしたらどうでしょうか。
確かに「自傷」はゼロかもしれませんが、それはお子さんにとって楽しく、豊かな生活とは言えませんよね。
目の前でお子さんがパニックになっていると、どうしても──
静かにしていてほしい…
と願ってしまうのは、親として当然です。
しかし、私たちの本当のゴールは、お子さんを「おとなしくさせること」ではありません。
私たちが目指す、お子さんの健康的な姿。その代表が「遊ぶこと」です。
特に、誰かに相手をしてもらわなくても、
「自分一人で好きな遊びに没頭できる」
この力が、お子さんの生活を劇的に変えます。
自傷に使っていたエネルギーが、大好きな遊びや趣味に向けられるようになるからです。
そして、お子さんが一人で楽しく過ごせるようになると、親御さんにも心の余裕が生まれます。
- 後回しにしていた家事を、落ち着いて片付けられる。
- 温かいお茶を飲んで、ホッと一息つける。
「自傷がなくなること」は、支援の目標の半分にすぎません。
残りの半分は、ご家族全員が「あぁ、今日も良い一日だったな」と思えるポジティブな時間を、どれだけ増やせるかなのです。
一人遊びに没頭できることの大切さについては、こちらの記事でもお伝えしています。
📒問題行動は“無視”では減らせない──健康的な習慣で上書きする支援
早期支援で必ずお伝えする「強度行動障害」という現実
自傷ゼロを目指し、家族全員が健康的な生活を送る──
この言葉は、もちろん私の本心です。
しかし、残念ながら、この言葉を繰り返し伝えるだけでは、多くの親御さんにその思いは届きません。
支援を必ず成功に導くためには、理想を伝えるだけではなく、時に現実を直視していただかなければならない場面があります。
その際──
強度行動障害という言葉を必ず覚えてください。
と、お伝えすることがあります。
強度行動障害は、自分の体を激しく傷つけたり、周囲の物を壊したりといった行動が非常に強く、ご家族だけでは生活を支えることが困難になる状態を指します。
支援を始める前に、強度行動障害のリアルを描いたドキュメンタリー番組を見てもらうことがあります。
そこにあるのは、激しい行動によってご家族も支援者も疲れ果ててしまう、壮絶な現場の姿です。
こうした深刻な状況は、ある日突然始まるわけではありません。
多くの場合、幼少期からの「困りごと」が積み重なり、適切な対応ができないまま大人になってしまった結果であることが少なくないのです。
今回発表したケースでも、2歳の時点で自傷や生活リズムの乱れがありました。
そのため、私は初回相談のときから、将来のリスクを率直な言葉で親御さんに伝えました。
親御さんにとっては、非常に厳しい言葉であったことは間違いありません。しかし、ただ「手立て」を教えるだけでは足りないのです。
こういう未来もあります。一緒に予防していきましょう。
このように語りかけて、強い危機感を伝えることが、時に必要なのです。
人は希望だけでは動けないこともあります。これは、10年以上支援に携わってきて何度も経験してきたことでもあります。
強度行動障害については、過去記事で何度も紹介しています。
📒“今は困っていない”が一番こわい──強度行動障害という言葉、知っていますか?
学会発表を終えて
発表後、予想を上回る反響をいただきました。
昼休みがなくなるほど質問がありましたし、座長の先生からも、「早期支援の大切さが伝わる良い報告」とのありがたいお言葉をいただき、大変励みになりました。
支援の実際をお伝えすることで深いディスカッションができますし、直接やりとりすることでネットワークが広がると実感できました。
当相談室では、行動分析学に基づいた家庭への出張相談を行っています。今回のような自傷行動の他、言葉の遅れやかんしゃくなど、子育ての悩みをご家庭で解決します。
こちらからご相談ください。


- 対象年齢: ご相談時点で3歳未満のお子さま
- エリア: 千葉県・東京都を中心に出張対応
- 支援方法: 応用行動分析学(ABA)に基づいた支援プランを個別にご提案
- サポート内容: ご家庭での療育支援、親御さんへの具体的アドバイス
📩 お問い合わせは下記フォームよりお願いいたします。








