子どもの意思を尊重しすぎていませんか?──親が決めるべき場面と声かけの軸

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言葉が出始めたのに「言うことを聞かない…」──新たな悩みの正体とは?

出張療育の現場では、言葉やコミュニケーションの相談がとても多いです。

実際、初めてお問い合わせをいただいた時点で、ほとんどのお子さんは、ほぼ無発語の状態です。

そこから発語やコミュニケーションの練習を開始するのですが、言葉が出始めればそれで「めでたしめでたし」ということはほとんどありません。

たとえ言葉が出てきたとしても…

全然言うことを聞いてくれません…

「イヤ」、「ヤダ」ばっかりで疲れます…

こんな悩みが新たに出てきます。

そんなとき、もちろん私は、支援者としてアドバイスしますし、実際に親御さんの目の前で子どもへの関わり方をお手本でお見せします。

今回の記事では、そんな子どもに関わる際の「言葉の言い回し」についてお伝えします。ですが、決してお手軽なテクニックの話ではありません。

もっと大切な原理原則のお話です。


「歯磨きする?」はNG?療育の専門家がその声かけに待ったをかける理由

たとえば、親御さんが子どもにこんな声かけをしたとします。

歯磨きする?

お出かけする前に、おしっこ行っとく?

こういう場面で私は、お父さんやお母さんに…

ちょっと細かいようですが、その言い回しはやめましょう

続けて──

『歯磨きします』『お出かけ前は、おしっこだよ』と言い切ってください

とお伝えします。

疑問形ではなく断定で、ということですか?

いえ、実はそういうことではないのです。


「子どもの自由」にしてはいけないこと(生活習慣・健康・安全・ルール)

たとえば、歯磨き、排泄、道路で手をつなぐ。
こうした行動は、基本的な生活習慣です。健康安全ルールを守るための行動です。

しかし、子どもはこれらの行動の意味なんて分かりません。

歯を磨かないと虫歯になってしまうことをリアルには想像できません。

お出かけしたとき、次にいつトイレに行けるかも分かりません。

道路のどこを歩くか、飛び出したら危ないということも、まだ判断できません。

つまり、これらの行動は、子どもの意思に任せてはいけないのです。

歯磨き、イヤ!

と言ったとしても、歯磨きはします。

手つながない!

と言ったとしても、危ない道路では手をつなぎます。

少し強い言い方に聞こえるかもしれませんが、ここには「ノー」の選択肢がありません。

これらは、親が「やる」と決めたら、やるしかない行動です。


「選ばせていい場面」と「親が決める場面」を見分ける判断基準

一方、たとえば親子で公園に到着して、

ブランコにする?滑り台にする?

これはまったく問題ありません。

なぜなら──

「どうぞご自由に」
「何をするかも、やるやらないも好きに決めてください」

という、まさに子どもの意思や想いを尊重する場面です。

実際、ブランコか滑り台かで、

先生、子どもが選んでくれなくて困りました

という相談を受けたことは、一度もありません。


『チャイルドシート乗ってくれる?』という言い回しは……

安全を守る場面なので……

『乗りましょう』ですね

そうです。
命を守るためにも、チャイルドシートには乗るしかないのです。

そこで子どもに選ばせるような声かけはしないでほしいです。

もちろん、本質的には言い回しの問題ではありません。断定だろうが、疑問形だろうが、どちらでもいいのです。

でも、言葉は「決意表明」みたいなものです。

「安全第一です」
「健康を守ります」
「なので、あなたに伺い立てませんよ」

という、まさに「親の意思」こそ尊重されるべき場面というわけです。


親の「ブレない軸」が、子どものイヤイヤや親子喧嘩を減らす近道になる

親が子どもにどう声をかけるか──

やはり、そこに「判断基準」や「軸」がないと、親御さん自身がブレブレになってしまいます。

そのときに大切になるのが、先ほどお伝えした、

「基本的な生活習慣」
「健康」
「安全」
「ルール」

といったキーワードです。

多くの親御さんが困っているのは、

強く言ったら、子どもが傷つくのではないか…

親が決めてしまうと、子どもの気持ちを無視することになるのではないか


という不安です。

でも、私はむしろ、分かりやすい親の方が、子どもにとっても楽だと思っています。

親が竹を割るようにスパンと言い切るときは──

ここは、大人の判断が尊重される場面なんだ…

一方で、親が子どもに聞いてくれるときは──

ここは、僕の想いを尊重して決めさせてくれる場面なんだ…

この違いを、子どもにとって分かりやすい形にして教えていくという視点です。

小さいときからこのような経験を積み重ねていくことで、親子の不要な、そして不毛な言い争いは減っていきます。

私の療育では、これを幼少期から親子で練習していきます。はい、技術以上に根気が必要です。


「子どもの意思を尊重する」の勘違いを解く

今回の記事を書こうと思ったのは、ある幼稚園の先生との会話がきっかけです。

『子どもの意思を尊重する』という言葉が、拡大解釈されている気がします

おっしゃる通りだと思います。

子どもの想いが尊重されない場面なんて、いくらでもあります。そして年齢を重ねるほど、その場面は増えていきます。

今回の記事では、子どもは大人の言うことを常に聞くべきなんて言っていません。また、「疑問形ではなく断定で」のようなお手軽なハウツーを言いたいわけでもありません。

大切なのは──

これって、子どもに伺い立てることではないよね

ここは、大人が主導になる場面だよね

と、判断できることです。

その際のヒントになればと思い、この記事を書いたというわけです。


たとえば「お風呂に入るかどうか」も、子どもに選ばせる場面ではありません。お風呂を拒否する子への具体的な関わり方は、こちらの記事で詳しく解説しています。

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